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辻調グループ フランス校

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【素晴らしい環境での研修!】松井 愛雪さん:研修先 PATISSERIE THIERRY MULHAUPT(パティスリー ティエリー ミュロップ)

研修生レポート

2025.06.12

【お菓子好きなら憧れる、アルザスにある研修先】
フランス北東部アルザス地方ストラスブールにあるラボで働いていますストラスブールに3店舗、コルマールに1店舗の計4店舗があります。規模は大きくパティスリー、ヴィエノワズリー、ショコラトリー、グラッスリー部門に分かれており各所広々とした製造部屋があるので総じてとても大きい建物になっています。ラボ内ではbean to bar(チョコレートをカカオから製造する方法)も行っているので専用の機械なども充実しています。客層は幅広く、ラボがある店舗では地元の人が多いように感じます。




【フランス人のスピードに食らいつく!!】
朝はまず、4店舗に送るガトーやアントルメの仕分けとフィニション作業から始まります。出荷の時間が決まっているため、効率良く早く綺麗な仕事をする意識をしています。サービスが終わったあとは、在庫の補充を行い、どんどん仕込みをしていきます。やはり、フランス人のスピード感はすごくはやいので最初は必死に食らいつく感じでした。私は基本的にパティスリー部門に居るので仕込みではガトーに使用するクレームやグラサージュなどガトーに使用するパーツや焼き菓子類に携わる事が多いです。惣菜類も作っているので野菜を切ったり、食材の下処理、ベシャメルソース作りなどをさせてもらう事もありました。仕事内容はさまざまで毎日異なります。最初の頃は2年目のフランス人研修生とペアになって色々な仕事、作り方などを教えて貰って覚える、の繰り返しで、できるようになった作業から少しずつ一人で任せてもらえるようになりました。現場での指示はスーシェフから出されるため、今では毎回自分で仕事を貰いに行きます。仕込みを終えたら次の仕込みへと、次へ次へともらい、早く覚えて理解する事でさまざまな作業をどんどん任せてもらえるようになります。仕事内容は幅広いのでたくさん学べます。自分が携わったお菓子が実際に店頭に並び、働くお店の商品としてお客様の手に渡ることを思うと、責任感とともにワクワクしながら作業しています。

ラボ内の様子

ラボで準備しているお菓子

同僚と一緒に

【尊敬できるシェフと優しく教えてくれる同僚】
オーナーシェフのティエリーミュロップ氏は普段とても明るく、活気のある方です。ルレデセールの会員でもある方です。シェフは仕事となると、明るい雰囲気から一変し、自分のお店の商品には妥協をせず、真剣に向き合う方です。食材も余す事なく大切にしていて、無駄にしている食材などがあると強く注意しているのを聞きます。毎日はっきりと指摘されていて、従業員が効率の悪い仕事をしていたり、少しでも動きが遅かったり、やり方が違っていたりすると、すべてに目を通して注意されています。そのため、シェフがいる現場は常に緊張感があります。仕事中は一見とても大胆に見える動きも、すべて商品を考えてのことで、一切無駄のないスピード感のある仕事をされています。やはりシェフが仕上げたものはどれも綺麗で完璧なので、本当にすごい方だと思います。シェフは普段から気にかけてくださり、「これ持って帰って食べてね」とパンや惣菜などをよく頂きます。
同僚に関して。現時点で正社員は5人居ます。私の他に研修生も何人か居て、研修生達も正社員と同じように従業員の一員としてバリバリお店を回しています。アルザスにあるパティシエの専門学校から来ていてお店で約2年間経験を積んでいるそうです。従業員は皆、仕事に対して真面目で責任感を持っています。仕事後の掃除の時間もみんなで一生懸命に掃除します。真剣に向き合っているからこそ、仕事中には言い合いになることも多く、立場や年齢に関係なく、全員が意見を言い合います。みんな本当にはっきり言うし態度に出す人が多くて最初はそうした雰囲気に慣れず戸惑いましたが、次第に理解できるようになり、自分の意見を持ち、はっきりと伝えることの大切さを学びました。きつく言われる事もありますが、ちゃんと私にはっきり言ってくれて、自分では気づかなかった事や次はこうしようと考え直す事ができるのでありがたいです。また、分からない事や意見を聞くと優しく教えてくれる人ばかりで、同僚のみなさんには感謝しています。本当に人に恵まれた環境だと感じていますし、このお店で働かせていただいている事がとても嬉しいです。

シェフのミュロップ氏と


同僚にも恵まれています

【ドイツが近いストラスブールでの生活】
研修先のストラスブールはドイツとの国境に近く、クリスマスマーケットが特に有名です。家が中心地の近くにあるので毎日のように行きます。ストラスブールは観光地で栄えているので本当になんでも揃いますし、パティスリーが本当に周りきれない程たくさんあります。比較的治安も良く、優しい人が多いので住みやすいです。私は毎日のようにパティスリーを見てまわり、いろいろなお店のお菓子を食べ歩いています。地元の食材やアルザスのブランドを使ったケーキが多く、どれも素材の良さを生かしたつくりのものが多いと感じます。フランスとドイツのあいだで何度も領土が変わったという歴史的背景もあり、パティスリーやブーランジェリーにもドイツの影響が見られます。また2.30分程でドイツの隣町kehlにも行けます。ドイツのショッピングモールや薬局の方が安く買えるのでよく行きます。
お店には寮が無く、私はストラスブール中心地近くの6階建てのアパートを借りて住まわせてもらっています。エレベーターは無く、螺旋階段で毎日六階まで登るので良い運動が出来ます。部屋は1人部屋でトイレ、シャワー、キッチンが廊下にあって同じ階の他の住民と共同で使用しています。部屋は屋根裏部屋なので小さめですが立地が良いのでありがたいです。

ストラスブールの風景

アパートのお部屋です

【食べ歩きに励み勉強!!】
休みは基本週に1日しか無いのですが、毎週のようにお菓子を求めて、1人でいろいろな国や地方へ足を運んでいます。直近では友達とドイツのミュンヘンに行きました。研修に来てからは、お菓子の為にフランス以外にも4カ国行きました。フランス地方菓子のルーツ、発祥、元々どうやってこのお菓子が誕生したのか、その美味しいが誕生した歴史や伝統を知るのが楽しくて、伝統菓子の発祥の店や地域、地元で有名なお店など、自分で調べて行きます。休日もお菓子を勉強しに行くという程で美味しいお菓子を、幸せを求めて沢山食べ歩き、食べたお菓子の構成、味などメモして勉強します。どんな食材を使っているいのか気になったら店員さんに聞いて、その地域のスーパーで買って食べてみたりもします。地元産のものだと現地でしか手に入らないので、そこでしか食べられない美味しい食材を探しに、色んな場所に行って実際に食べて感じて刺激をもらって。新しい発見が沢山あって、これがめちゃくちゃ勉強になるし最高に楽しいです。基本的に休みは週に1日だけなので行ける範囲は限られますが、ずっと行ってみたいと思っていた地方やお店が本当にたくさんあるので、休みの日は計画を立てて行きます。時間がいくらあっても足りません。ストラスブールからはアクセスが良くどこへでも簡単に行く事が出来るのでありがたいです。

同僚と食べ歩き

ドイツのミュンヘンにも行きました

【実際にお菓子を食べて調べて深く知ることができる】
働いているお店では、フランス・アルザスの伝統文化に基づいたお菓子が多く作られていて、これまで知らなかった伝統菓子にもたくさん出会うことができ、本当に面白いです。さらに全てのレシピが手に入るので、実際に食べて感じて、調べて深く知ることができるのはとてもありがたい環境です。また、レシピ自体も基本や伝統にしっかり基づいており、材料の組み合わせや配合の意味などを実際に教わりながら学べることがとても多いです。使われている食材にも、地元アルザスならではのブランドがふんだんに使われていて、そこからもシェフの誇りやこだわりを強く感じます。
フランスと日本では、使われる食材や道具が違うため、それに合わせた作り方や手順も変わってきます。日本の学校で学んだやり方とは異なる部分も多く、フランスならではの手法や考え方を、現地で直接学べることは本当に新鮮で貴重です。また、フランス人の働き方や、仕事に対して大切にしている価値観を間近で感じられることも、ここでしかできない経験だと思っています。
もっと多くのことを学ぶため仕事を任せてもらうには、シェフに認めてもらう必要があります。フランス語をフランス人のようにペラペラ話せるわけもないので、より多くの仕事を任せてもらうには、行動で信頼を得るしかありません。職場の皆さんは全員、仕事が早くて効率重視、そして真面目に働いています。その中で私も、毎日「覚える→実践する」を繰り返しながら、どうすればより効率よく、早く、そして綺麗な仕事ができるかを常に考えて挑戦しています。もちろん、失敗も多いです。最初のころ、指示された内容を正しく解釈できず間違えて「なんでこうしているの、さっき言ったでしょ、分からないなら聞いて。」などと注意されたことがありました。その時は悔しくて言い返せませんでした。やはり、指示を聞き間違えると仕事になりません。言葉の壁を理由にはしたくないので言語面でつまずいた自分が情けなくて、それ以降は、長文で早口に指示されたときに「分かりました」だけで済ませず、「○○を○○して、〇〇すればいいんですね。じゃあその後は〇〇でいいですか?」みたいな感じで復唱して確認するようにしています。言語による無駄なミスを防ぎつつ、私がきちんと理解しているということを相手にもしっかり伝える為です。より多くの仕事を任せてもらえるように、自ら積極的に発言するようにもしています。早く綺麗に作業をしようと日々真面目に仕事をする中で、最近ではガトーの絞りやアントルメのモンタージュ、生地のエタレなど、いつもスーシェフや正社員がするような仕事を、「これやってみる??」と言って挑戦させてもらったり、「C'est parfait ! nickel !(完璧)」などと仕事を褒めてもらえる事も増えて、毎日のように新しい事を学ばさせてもらっているのでとても楽しく働けています。「今日はこれに挑戦しよう」「今日はもっとこうしてみよう」と、自分との約束をちょっと決めてみたり、毎日積み重ねていくことで、少しずつ自信につながっていき、自分を信じてあげられるようになると信じています。
ここでしか、今しか得られない経験と学びが、本当にたくさんあります。それをひとつでも多く吸収し、自分の中に落とし込んで今後にどう活かすか、自分の力で考えていかないといけないと思います。この環境で学べていることに、感謝しています。

【環境は自分次第!】
渡航前は全くの未知の世界だったので、研修を1番楽しみにしていました。研修に対してはフランス人の中で、日本とは違う環境で自分がどれだけ挑戦出来るのか試せる!というワクワクの気持ちが大半でした。当然、現実は全く簡単ではないし出来ない事だらけです。国が違えば文化も違いますし、フランス人からすれば私は「外国人研修生」でしかないです。それでも、まだ言葉がつたない私に、職場の方々は対等に接してくれます。つたないフランス語でも、明るく笑顔で話す事やリアクションでコミュニケーションを計ることで次第に話しかけてくれる事が増えたりして、職場の人たちのおかげで良い研修生活を送る事が出来ています。環境は自分次第なんだと改めて思います。
フランスで一人暮らしをしながら週6日、周りに日本人は誰一人居ないし家に帰れば1人で孤独の環境で働くなかで、この5ヶ月しか無い研修生活、親に頼んでフランスに来させてもらったからには一つでも多く何か得ないといけない、それ以上の価値をみいださないといけない、もっとこうしないと、もっと話さないと、と日々自分を追い込むことや「なぜフランスへ来たのか」「自分はどうなりたいのか」など、自分自身と向き合う事が増えました。今までとは違う新しい世界に触れていく中で、自分が信じるものや考え方も少しずつ変わり、逃れられない環境で生きていく中で辛いと思ってしまった時期もありました。体力的精神的にしんどくなっても、身体を壊さないためにご飯を食べないといけない。考えすぎて眠れなくなっても、朝は来て出勤をしないといけない。と自分で追い込んだ挙句いつの間にかストレスを抱え込んでしまい、そんな気持ちになってしまった時期もありました。今もなお未熟な自分の現実や自分の弱い部分と向き合おうと葛藤しています。そんな時もあったからこそその自分に対してどう対処すれば良いのかが分かるようになったし、そこから学べた事もたくさんあります。元々すぐ落ち込む性格では無く、これまで知らなかった自分に出会えたことで本当に良い経験になっていると思います。

【これからの目標】
この研修の中での目標は、残りの2ヶ月間を最後まで猪突猛進、全力で走り切ることです。お店の味を、人を観察研究して日本に持ち帰ります。また、考え方の幅を広げて、どんな困難にも立ち向かえるような強い人間力を養いきたいです。
私が趣味のお菓子作りを越えてパティシエを職業として選んだ理由は誰かを幸せにしたいという気持ちからです。私はお菓子の、人を笑顔に、幸せにする力が大好きです。お店で働くことが出来て、自分が作ったお菓子が誰かに届くと思うとそれだけで幸せな気持ちになれます。好きなお菓子をもっと作れるようになる為に、貪欲にこれからも挑戦していきます。留学させてもらえて、このお店で修行させてもらえている今、本当に貴重な経験をたくさんさせてもらっているのも、家族や周りの人達のおかげだと思うので感謝しています。その初心と感謝を忘れず直向きにどんなことにも挑戦し続けていくのが今の目標です。


松井 愛雪(MATSUI Mayuki)

奈良県立 橿原高等学校 卒業
辻調グループ出身校 辻製菓専門学校 大阪
研修先 PATISSERIE THIERRY MULHAUPT
Thierry Mulhaupt - patissier chocolatier Strasbourg