Daniel et Denise (ダニエル・エ・ドゥニーズ)
『Bouchonブション』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
ブションとは、美食の街リヨン独特の形態の料理店の事で、「Bouchon Lyonnais ブション・リヨネ」とも呼ばれ、"リヨンの伝統的な料理が食べられる大衆食堂"の事を指します。メニューには家畜の頭や足、胃、心臓、舌などの臓物や正肉でない部分を使った料理が多くある事が特徴です。
発祥は18世紀頃と言われており、比較的安価だった臓物などの料理を労働者の集まる庶民的な食堂で提供していた事が原点になります。女性の料理人がふるまう事が多かったのもブション・リヨネの特徴で、「Mère Lyonnaise メール・リヨネーズ」(リヨンの母たち)と称される女性料理人たちによって、"美食の街リヨン"と呼ばれるまでに名声を上げていった存在ともいえます。また、伝統的なブションはリヨン観光局によって設立された「ブション・リヨネ協会」から正式な認定を受けることが出来ます。その目印として、その証である事を店先に掲げることが許されており、ニャフロンという人形のキャラクターが描かれています。
このマークは"間違いなし!"という印なので、リヨンでお店選びに迷ったら、参考にしてみてはいかがでしょうか。
さて、今回は協会からの認定も受けている『Daniel et Denise ダニエル・エ・ドゥニーズ』へやって来ました。
こちらは、当時『Daniel et Denise Léron ダニエル・エ・ドゥニーズ・レロン』と呼ばれ、Daniel LÉRONダニエル・レロン氏と、その奥さんDenise(ドゥニーズ)氏が1968年に創業され、2004年にM.O.F. (Meilleur Ouvrier de Franceフランス国家最優秀職人章)を取得されている、Joseph VIOLAジョセフ・ヴィオラ氏が引き継いだブションです。現在はリヨン市内に3店舗とエピスリーとワインショップを展開されています。
店内は、ブションのトレードマークである赤と白のチェックのテーブルクロスが敷かれ、木の温かみのある内装です。
テーブルに案内され、まずはワインを注文します。今回は日本ではあまり知られていない、Coteaux du Lyonnaisコト―・デュ・リヨネ(A.O.C.)の白を注文しました。
リヨン近郊のエリアでは白はシャルドネやアリゴテ、赤やロゼはガメイの使用が認められています。すっきりした味わいと、キリっとした酸味が、少し暑くなってきた今の時期にぴったりなワインでした。
料理は、コースとア・ラ・カルトがありましたが、より多くの料理が見たかったのでア・ラ・カルトで注文をしました。
黒板にはおすすめ料理が記載されていたので見ていると、フランス人のサービスの方が日本語で話しかけてくれました。実は日本が大好きで独学で日本語を勉強されているそうです!
前菜は、おすすめメニューの中から2つ。
Œuf parfait, parmentière de pomme de terre et émulsion de Vacherin Fribourgeois
小鍋に盛りつけられたのは、じゃがいもの温かいポタージュで、中にはトロトロの半熟卵が隠されています。周りにはVacherin Fribourgeoisヴァシュラン・フリブルジョワという牛のミルクからできた、スイスのセミハードチーズの泡が添えられています。濃厚な卵とチーズのコクがとても相性が良かったです。
Asperges blanches des Landes, jambon cru Serrano et vinaigrette aux écorces
5月の今が旬の季節!ホワイトアスパラガスです。この時期になるとどうしても食べたくなる食材の1つです。色よくローストされていて、柔らかくほんのり甘みもあり、スペイン産の生ハムの塩気で食べる手が止まりませんでした。そして、柑橘風味のドレッシングがかけられていてさっぱりと食べることが出来ました。
Le pâté en croûte Daniel et Denise champion du monde 2009, ris de veau, noix de veau et foie gras
こちらは、人気メニューの1つでもあるパテ・アン・クルート。ヴィオラ氏は2009年のパテ・アン・クルート世界大会の優勝者でもあります。リ・ド・ヴォ―(子牛の胸腺)と、中央にはフォワ・グラが綺麗に配置された絶品の一品です。シェフのスぺシャリテなだけあって、メニュー表の一番上に記載されていました。
Nos trois salades Lyonnaises ≪Daniel et Denise≫ museau de bœuf, salade de lentilles à la Lyonnaise, salade de pommes de terre amandine et hareng fumé
ポーチドエッグやベーコンの乗った定番のリヨン風サラダではなく、大きなボウルに入った5種類前後のサラダがテーブルに運ばれ、自分で好きなだけ取り分けて食べるスタイルの前菜ですが、今回はシェフのアレンジが加えられています。左側にはレンズ豆のサラダ。中央にはドレッシングでマリネされたじゃがいもの上に燻製されたニシン。右側にはmuseauミュゾーという豚の鼻や舌などの肉のサラダが綺麗に盛りつけられています。
リヨン風サラダといえば、これらの具材とベーコンやクルトンなどと一緒に和えられたサラダをイメージしますが、こちらでは、少し現代風の盛りつけにアレンジされています。どれも上品な味付けでした。
続いては、メイン料理です。
Paleron de bœuf confit, sauce vin rouge
牛の肩肉を使った料理です。コンフィにされた肩肉をほぐして、香草や香味野菜と一緒に成型し、再度表面を香ばしく焼いています。肉のうま味と、柔らかい肉質がしっかりと感じられました。赤ワインを使ったソースは、サービスの方が「この赤ワインソースはシェフのスペシャリテです」と説明していました。赤ワインの風味はもちろん、肉のうま味も少しプラスされているような濃厚なソースでした。
Tablier de sapeur
日本ではなかなか見る事のない料理だと思います。牛の第二胃のパン粉焼きです。とても肉厚で噛み応え抜群!一度茹でられているので臭みもなく柔らかく食べることができます。Tablier de sapeur タブリエ・ド・サプールとは、"工兵の前掛け"という意味で、見た目がその名の通り前掛けに見えることから名付けられました。シンプルな料理ですが、食べると病みつきになり、「あー、フランスにいるなー」と感じられる料理の一つです。笑
La tranche de foie de veau poêlée (origine française) déglacée au vinaigre de vin vieux en persillade
こちらも、リヨン名物!子牛のレバーの料理です。肉厚のレバーをさっとポワレします。この料理はステーキと同様に火通し加減を聞かれます。今回は、ジューシーに味わえるroséロゼ(中がピンク色で少し血が溜まっているような状態)で。仕上げにお酢を加えて酸味をプラスしており、ぷりぷりの食感とお酢の酸味が食欲をそそります。Tablier de sapeurと同様に、リヨンの内臓料理を代表する一品です。
La quenelle de brochet maison à la Lyonnaise, sauce Nantua
最後は魚料理のクネルです。淡水魚のすり身をクネルと呼ばれるフットボール状に成型し、ザリガニの殻で作った甲殻類のソースを上からかけてオーブンでふっくらと焼き上げた料理です。アツアツのクネルのはんぺんの様な弾力のある食感と、香ばしいザリガニのソースが絶品のリヨン名物です。
メイン料理は4品注文。しかし、つけ合わせがあります!!
定番のつけ合わせの、鴨の脂で揚げたじゃがいも(写真上)と、マカロニのグラタン(写真下)です。すごい量になりました。。。もちろん1人ではなく4人で食べに行っていたので、協力して食べていきます。笑
では、ここからはデザートです。
La tarte tatin aux prilines de Saint-Genix
リンゴのタルトと、サヴォワ地方のSaint-Genixサン・ジュニという村で有名な赤く色づけたプラリンヌを組み合わせたデザートです。綺麗な赤色に色づいており、ほんのり温かい状態でした。ほのかな酸味とプラリネの香ばしさがとても相性が良かったです。このSaint-Genixのプラリンヌはお店のブティックでも販売されています。
L'ile flottante de Julia à la praline rose
メレンゲを半球状にして、バニラソースに浮かべたデザートです。今回は、先ほどと同じくプラリンヌ・ルージュで風味をプラスしています。イル・フロッタントとは、"浮かぶ島"という意味があり、火を通したメレンゲなので比較的軽く食べられます。
Le baba maison ivre de rhum
ワインのコルクの形に焼き上げたブリオッシュ生地にたっぷりとラム酒風味のシロップを染み込ませ、中央にバニラクリームが絞られています。仕上げにラム酒をかけてもらう、パンチの効いたデザートです。お口直しも兼ねて、料理をたくさん食べた後にはどうしても食べたくなるデザートです。
Le café gourmand, Julius Meinl
カフェ・グルマンとは、エスプレッソ・コーヒーに小さなデザートを数種類添えた"デザートセット"のようなものです。フランスのカジュアルなレストランではよく見かけるメニューになります。今回は、注文していなかったデザートの中から「La brioche façon pain perdu aux praline」と「Pot au chocolat valrhona」の小さいものと、マドレーヌ、バニラ風味のアイスクリームでした。
エスプレッソ・コーヒーは、メニュー名にもあるようにJulius Meinlユリウス・マインルというオーストリアのウィーンで有名なブランドのものです。以前、ウィーンに行った際にお土産でJulius Meinlのコーヒーを買って帰った事があったので、懐かしく思い注文してしまいました。
赤と白のチェック柄のテーブルクロス、木製の椅子やテーブル、バーカウンター、古いポスターや写真、壁に飾られた銅鍋、そして古くから守られ今も親しまれているリヨン名物・・・。飾ることなく気軽に美味しい料理が食べられ、店によってバラバラな個性を楽しめるのは、ブションならではの体験ではないでしょうか。星付きレストランが増えていく中で、伝統的なスタイルを守り続けているブションの魅力を感じてみてはいかがでしょうか。
『Daniel & Denise Créqui』 ※本店
156 rue de Créqui 69003 Lyon
Tel :04 78 60 66 53
『Daniel & Denise Saint-Jean』 ※系列店
36 rue Tramassac 69005 Lyon
Tel:04 78 42 24 62
『Daniel & Denise Croix-Rousse』 ※系列店
8 rue Cuire 69004 Lyon
Tel:04 78 28 27 44
『L'Épicerie Daniel & Denise』 ※ブティック
25 Av. Henri Barbusse 69100 Villeurbanne
Tel:04 78 62 78 96


