【ボジョレの畑の中で】restaurant Ema(レストラン エマ)
今回紹介するレストランは、フランス校から車でおよそ40分のところにあるAvenas(アヴナ)という村にある『restaurant Ema』(レストラン エマ)です。(以下の文章からレストラン名をエマと記載)エマがあるアヴナや、フランス校のある地域はボジョレワインで有名なボジョレ地区にありますが、フランス校を出発してからレストランまでの道のりはぶどう畑が広がっており、山の斜面に連なるその景色はまさに壮観の一言で、道すがら非日常を感じさせてくれます。
ぶどう畑を抜けた先にレストランがありました。
こちらのレストランは、Emillien AUCAGNE(エミリアン・オカーニュ)氏とMargot AUCAGNE(マルゴ・オカーニュ)氏の夫婦で経営をされていて、お二人の名前の頭文字を取って『Ema』という風に名付けられたそうです。お二人はリヨンにある『Sébastien Bouillet』(セバスチャン・ブイエ)というパティスリーで出会い、その後リヨンのいくつかの名店で修業をされた後に2019年の3月に現在のレストランをオープンされました。客席は35~40席程で、天気の良い日はテラスで景色を眺めながら食事をすることも可能です。
レストランにはブティックとバーも併設されており、様々なワインや記念品を購入したり、カウンターで気軽にワインを楽しむこともできます。
店内の様子です。
ブティックの様子です。
メニューは前菜2品、メイン料理2品、チーズの盛り合わせ、デザート3品の中からそれぞれ選んだ品数で価格が変わるのですが、今回は前菜、メイン、デザートから1品ずつ選ぶ35€のコースにしました。料理が来るのを待つ間にワインと、それに合わせてちょっとしたおつまみも頼んでみました。
『Beaujolais villages blanc Famille MORIN』
まずはボジョレワインが飲みたいということで、白ワインを頼みました。ボジョレと言えば赤ワインというイメージがあると思いますが、実際に赤ワインの生産が大部分を占めていて、白ワインは極少量しか生産されていません。しかし、そのクオリティはとても高く、穏やかな酸味でとても飲みやすいため、多くの人たちに親しまれています。
『Terrine de porc miel&noisette』
豚肉のテリーヌです。一般的なテリーヌと違い、ほぐしたようなほろほろとした食感のお肉と、甘いはちみつの風味とヘーゼルナッツの食感が特徴的です。
『Quenelles de volaille jus reduit』
家禽類(鶏やうさぎなどの鳥類)のお肉のすり身を使って作られたクネルと呼ばれる料理です。川魚のすり身を使って作られるのが一般的ですが、そちらをアレンジしたものです。ほんのりと緑色がかっているのは、すり身の中に熊にんにくと呼ばれる山菜の葉をすりつぶしたものを併せているからですが、同時にパナードと呼ばれるシュー生地に似たものを併せることで、よりふわふわとした食感に仕上げることが出来ます。
『Blinis chèvre courgette』
こちらはコース料理のアミューズです。ブリニと呼ばれるそば粉を使ったクレープの上に、シェーブルと呼ばれるヤギのミルクで作られたチーズと赤ピーマンのピューレを混ぜたものを乗せ、ズッキーニのピクルスが添えられています。香ばしく焼かれたクレープと、シェーブルチーズのさっぱりとした味わいがとても良く合います。どの料理も味やサイズ感、ワインとの相性も申し分なく、後に続く料理の期待感を高めてくれます。
『Betterave』
ビーツを使った前菜の一品です。異なる食感で火を入れたビーツに、フロマージュ・ブランのソースを合わせています。つけ合わせは青いマイクロトマト、紫色のじゃがいも、砕いたナッツ、メルゲーズと呼ばれるスパイスの効いた子羊のソーセージ、デュカと呼ばれるアラブ諸国で良く用いられる混合香辛料です。それぞれ食感やうま味を補う役割をしていますが、ビーツの甘さや酸味の効いたソースとも良く合い、バランスの取れた料理に仕上がっています。
『Tomates en déclinaison』
トマトを様々な調理法で形を変えて提供する前菜です。赤、黄、オレンジのトマトをお酢とオイルでマリネしたものとピュレにしたものを盛りつけ、ヤギのミルクで作られたフレッシュチーズにアガスターシェというハーブで香りづけしたものが添えられています。アクセントに香ばしいクルトンも添えられていて、スペイン料理のガスパチョを思わせる一品です。
次に続くメイン料理に合わせて赤ワインを頼みました。
『Antoine Sunier RÉGNIÉ 2022』
今度はボジョレの赤ワインです。『Cru du Beaujolais』(クリュ・デュ・ボジョレ)と呼ばれるボジョレ地区の中でも特に素晴らしいワインを生産するといわれている10の村がありますが、その中の1つであるレニエという村で作られたワインです。早飲みのワインが多いボジョレの中でも、しっかりと熟成させることでよりおいしくなるのがレニエの特徴でもあります。
『Viande du jour』
本日の肉料理という意味ですが、今日は豚肉を使った料理でした。肩肉をコンフィという低温の油の中でじっくりと火を通した後、皮面をバシッと焼くことで皮のパリパリ感とほぐれるような身の食感が特徴的です。つけ合わせはズッキーニを素揚げにしたものとピューレにしたもの、赤玉ねぎのピクルスが添えられています。ソースはチミチュリというアルゼンチンが発祥のソースで、肉料理全般や魚のムニエルなどにも添えたりします。
『Aubergine』
もう一つのメイン料理です。なすを使った一皿です。半分にカットしてトロトロになるまで火を通したなすに、なすのピューレ、スペルト小麦、バジルのソースで構成されています。こちらはヴィーガン対応の料理となっていて、お肉を食べられない方でも楽しめる仕上がりになっています。
デザートは3種類です。上から順に...
『Crême Catalane』
スペイン発祥のお菓子で、フランスではクレーム・ブリュレの原型とも言われています。ヨーロッパ全土で親しまれており、今回のものはアクセントでカカオニブ、トンカ豆やコーヒーの香りがつけられています。
『Cassis』
文字通り、カシスがメインのデザートです。濃いうま味のカシスに野生のいちご、グラノーラのキャラメリゼ、紫蘇、羊のミルクで作られたクリームが合わせられていて、夏にぴったりのさっぱりとした味わいがします。
『Entremet pêche, abricot, verveine, biscuit madeleine』
今が旬の桃を使ったガトー仕立てのデザートです。中に挟んでいるビスキュイはマドレーヌのようなバターをたっぷりと使って仕立てられています。とてもしっとりとしていて甘酸っぱい桃とアプリコット、ヴェルヴェンヌの香りのクリームと相性が良いです。
今回訪れたエマは、険しい山道を抜けた先にあり決して行くのは簡単ではないですが、たくさんのお客様で賑わっていました。コストパフォーマンスに優れていて、料理のクオリティやワインの品揃えも豊富で、これから先もたくさんの人に親しまれるレストランであって欲しいと感じます。ボジョレを訪れる際は、是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
『restaurant Ema』
168 route du fût d'avenas, 69430 DEUX GROSNES
Tel :+33 (0)4 74 69 85 29
HP :https://www.emarestaurant.fr


