【引き継がれる伝説のメニュー】調理外来講習 M. Gilles REINHARDT (ジル・レナルト氏) / RESTAURANT Paul BOCUSE(レストラン・ポール・ボキューズ)
今回、外来講師としてお越しいただいたのは、リヨン近郊にあるレストラン、Paul BOCUSE(ポール・ボキューズ)より、シェフのジル・レナルト氏です。
レナルト氏はアルザス地方で生まれ、5歳の時には料理人になることを目指していたそうです。アルザス地方のストラスブールの調理師学校を1995年に卒業しました。そして、コルマールにあるレストランLe Fer Rouge(ル・フェール・ルージュ)で働いたのち、パリにて財務大臣の料理人としても働きました。その後レストランPaul BOCUSE(ポール・ボキューズ)やランスにあるChâteau Les Crayères (シャトー・レ・クレイエール)にてジェラール・ボワイエ氏の元で働きました。2000年から再びポール・ボキューズに戻り、現在も働かれています。2004年にはフランスの国家最優秀職人章(M.O.F.)を受章されました。2011年からポール・ボキューズのシェフをされています。
講習ではポール・ボキューズを代表する伝統的なスペシャリテを2品作っていただきました。
Loup en croûte, Sauce Choron「スズキのパイ包み焼き、ソース・ショロン」
1品目はスズキを丸1匹使い、パイ生地に包んで焼きあげる料理です。
スズキは、内臓やえらを取り除いた状態で鱗と皮を包丁で取ります。皮を剥がす作業は研究生も初めて見る方法で、身を傷つけないように素早く繊細な包丁さばきを研究生はしっかりと目に焼き付けていました。
スズキの腹の部分には、魚のムースを詰めます。魚のムースは研究生も何度も作ったことがありますが、ポール・ボキューズでは白身魚、ホタテ、塩を計量し、しっかりミキサーにかけて粘りをだします。全卵と卵白を加え、発酵クリームとポマード状のバターを加えることで普段の卵白のみで作るムースよりも濃厚でコクがあり艶やかな仕上がりになります。合わせて作る際の注意点も詳しく解説しながら作っていただきました。
そして、スズキをパイ生地で包みます。シェフの手に掛かればあっという間にスズキがパイ生地に包まれていきます。仕上げに、魚の形に見える様に模様を付けて、オーブンで焼成します。
ソースは卵黄と水を泡立てながら加熱してサバイヨンを作ります。そのサバイヨンに澄ましバター、レデュクション(エシャロット、白ワイン、赤ワイン酢、黒こしょう、エストラゴンを煮詰めたもの)を加えます。
このソースも研究生は習得済みですが、シェフのこだわりはここにもありました。通常はソースを漉してなめらかに仕上げますが、漉さないことでエシャロットや黒こしょうの食感がアクセントとして楽しめるソースに仕上げたい!と話してくれました。
仕上げにトマトの果肉を水分がなくなるまで煮詰めたものと、香りが良い香草でエストラゴンとセルフィーユを加えます。最終的なソースは、旨味や全体の味わいのバランスが整えられた仕上がりでした。
Poularde de Bresse en vessie, Sauce fleurette aux morilles
「鶏のヴェッシー包み、モリーユ茸風味のソース・フルーレット」
2品目は、ブレス産の鶏を1羽丸ごと使った料理です。
鶏肉を綺麗な形に糸で縛り、ブイヨンの中で茹でて火を通します。ポイントは、しっとりとした仕上がりになるように、沸騰直前の火加減でゆっくりと1時間火を通します。火が通ればvessie(ヴェッシー)と呼ばれる牛の膀胱に詰めて、さらにブイヨンに浮かべて加熱します。お客様のテーブルでふわっと広がるような演出をするため、パンパンに膨らませます。
ソースは鶏のガラ、マッシュルーム、エシャロット、ヴェルモット酒、白ワイン、エストラゴン、鶏の出し汁を鍋に入れてゆっくりと煮詰め、発酵クリームを加えた贅沢なクリームソース。モリーユ茸はポルト酒の中で味を含ませるようにしっかり火を通します。
つけ合わせはバターライス、ココットの形にむいて火を通したにんじん、ズッキーニ、大根とさやいんげんをお皿に盛りつけ、ヴェッシーに包まれたブレス鶏をのせて完成です。
2品とも、このまま提供されて、サービスマンがお客様の目の前で切り分ける演出があります。ダイナミックなプレゼンテーションや素早いサービス技術を体験することができるのは、フランス料理ならではの醍醐味です。
現在ボキューズ家100周年記念でスペシャルメニューをレストランで提供しています。特別に記念メニューのカルトをプレゼントしていただきました!
シェフの仕事がとても丁寧で早く、普段から厨房を仕切っている様子が目に浮かびました。そして、クラシックな料理を今も変わらず続けて作り、提供しているのがこのポール・ボキューズという素晴らしいレストランの魅力だと改めて実感できた講習でした。シェフ自身もミシュランで星を獲得することよりも、ポール・ボキューズの看板を背負って料理を作り続けることが大事だと話してくれました。
研究生も日本で学んだポール・ボキューズの料理と、本場のシェフが作る料理の違いを間近で見られる貴重な機会となりました。
最後にシェフとアシスタントを務めた研究生で記念撮影をしました!


