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毎日新聞連載 -美食地質学入門- 第51講「しょうゆ」

新聞
美食地質学入門

2022.10.05

10月4日(火)の毎日新聞(夕刊)に「美食地質学入門」が掲載されました。

テーマ食材はしょうゆ


▲こいくちしょうゆ(左)とうすくちしょうゆ(右)

食べ物に利用される微生物には真菌、細菌がいますが、ちょっと整理をしておくと、
真菌にはカビや酵母が含まれています。
カビの仲間の麹菌は、酵素を産生しタンパク質や糖質などを分解します。
酵母はアルコール発酵でアルコールと炭酸ガスを作り出し、さまざまな香りの成分も作り出します。
細菌はというと、納豆菌や乳酸菌が含まれ、納豆、ヨーグルト等などがつくられています。

さて、今回のテーマのしょうゆが出来上がるまでには3種類の微生物たちが、麹菌⇒乳酸菌⇒酵母、とリレーしながら働いてくれています。

たとえば...
しょうゆの色は黒ではなく、透かしてみると赤紫色。
これはしょうゆの別称「むらさき」の諸説ある語源の中の一つです。
この色は、メラノイジンという物質から生じます。
この物質は熟成中にアミノ酸とブドウ糖からアミノカルボニル反応により作り出されます。
ということは、そのためにはアミノ酸とブドウ糖が必要。

では、アミノ酸はどのように確保するのか。
主なしょうゆの原料は、大豆と小麦粉です。
大豆は畑の肉と呼ばれるくらいタンパク質に富んだ食品。
アミノ酸はタンパク質が分解されて出来るので、大豆のタンパク質を分解しなければいけない。
どうやって分解するのか。
酵素の働きで分解。
タンパク質を分解する酵素(プロテアーゼ)をどのように調達するのか。
そこで登場するのが、麹(こうじ)菌。
酵素の宝庫と言われる麹菌がプロテアーゼを作ってくれ、タンパク質を分解する。

一方のブドウ糖はどのように調達するのか。
ブドウ糖は炭水化物が分解されて出来るので、小麦粉の炭水化物を分解しないといけない。
どうやって分解するのか。
酵素の働きで分解。
炭水化物を分解する酵素(アミラーゼ)をどのように調達するのか。
麹菌がアミラーゼを作ってくれ、炭水化物を分解する。

無事、アミノ酸とブドウ糖が出来上がりました。

さて、本題は、巽先生のお話は新聞紙上及び毎日新聞ホームページをご確認ください。

料理は日本料理・石田先生の担当です。

兵庫県たつの市の「うすくちしょうゆ」と和歌山県湯浅町の「こいくちしょうゆ」を使っての料理となりました。



▲豆乳ゼリー(湯浅のしょうゆ使用)
石田;豆腐の上に青葱をのせ醤油をかけて食べる冷奴をイメージしました。
豆乳、醤油をゼラチンで固め、芽ネギを添えました。


▲チーズ醤油漬け(湯浅のしょうゆ使用)
石田;モッツァレラチーズは醤油に漬けて、チーズのコクと醤油の香り、味を楽しんでいただきます。
(緑色のはギンナンです)


▲豆苗の浸し(うすくちしょうゆ使用)


▲鮪の黄身海苔醤油・鱧の焼き霜造り、諸味ペーストがけ(こいくちしょうゆ使用)
石田;鮪の黄身海苔醤油は、卵黄を醤油漬けにし、だしで戻した海苔と混ぜ合わせ、卵の旨味を海苔と合わせました。
鱧の焼き霜造りは、諸味ペーストに梅肉を加えて、少し酸味のある味にしました。


▲海老の道明寺粉揚げ、鶏煎餅(こいくちしょうゆ使用)
石田;鶏は醤油の粉末をまぶしてパリパリ食感を、海老は泡醤油で楽しんでいただきます。


▲手前から時計まわりに帆立貝黄身煮、長芋白煮、うなぎ印籠煮、蓮芋青煮(うなぎの煮汁にはこいくちしょうゆ、他はうすくちしょうゆ使用)石田;うなぎ印籠煮はしょうゆをきかせた佃煮風に、帆立貝黄身煮は黄身をつけ、色よくコーテイングしました。
長芋、蓮芋はうすくちしょうゆを使用し、素材の味を生かし色よく煮ました。

合わせるお酒は、株式会社村秀雄商店さんの「車坂」。

▲山廃純米吟醸酒

能登~和歌山と長く麹菌と付き合ってこられた藤田晶子杜氏にもお越しいただき、杜氏自らお燗をしていただきました。(贅沢!)

10月には酒造りに入るそうで、来年の春まで付きっ切りでお酒の面倒を見るそうです。

次回11月のテーマは、ブロッコリー

どうぞお楽しみに。