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毎日新聞「美食地質学」第35講 特別編 食と地質と人の営みと 石川・能登の食材

新聞
美食地質学入門

2026.03.04

2026年3月3日(火)刊行の『毎日新聞 夕刊』に、「美食地質学」が掲載されました。
「美食地質学」は、食通のマグマ学者・巽好幸先生(ジオリブ研究所所長)と、辻調理師専門学校の教員が、地質学と美食の関係をテーマに、それにまつわるお料理とお酒を楽しみながら対談をおこない、理解を深めていくという企画です。

35講のテーマは「特別編 食と地質と人の営みと 石川・能登の食材」。
開講から丸3年を迎えたこちらの連載、日本各地の食材や郷土料理の"おいしい理由"を、地質や地殻変動といった大地の視点から探ってきました。
今回は特別編として、巽先生と辻調理師専門学校の3人の先生が登場。これまでの連載を振り返りながら、企画に込めた思いや取材を通じて得た気づきなどを語り合いました。

毎日新聞「美食地質学」第35講 食と地質と人の営みと 石川・能登の食材
https://mainichi.jp/articles/20260303/dde/012/070/006000c(※閲覧には会員登録が必要です)

いつもの辻調を飛び出し、今回は大阪・千日前道具屋筋商店街へ。
会場は、包丁専門店「一文字厨器」が構えるイベントスペース「一十一(ICHITOI)」です。
料理道具や厨房用品の専門店が軒を連ねる道具屋筋は、平日の昼間でも多くの人でにぎわう場所。店先から聞こえてくるお客さんたちの声や包丁を試す音に包まれながら、いつもとはひと味違う臨場感の中で対談が行われました。

一文字厨器「一十一(ICHITOI)」
https://www.ichimonji.co.jp/pages/ichitoi

日本料理の湯川徳之先生、安場昌子先生、松島愛先生が勢ぞろい。
実はこの連載で3人が一堂に会するのは初めてのこと。顔ぶれがそろって巽先生を囲み、いつにも増して賑やかな雰囲気に。

教材課の進藤先生は急きょ黒門市場へ買い出しに。
少し足を延ばすだけで食材が何でもそろうのは、まさに"大阪の台所"と称されるゆえん。

さっそく杯をかかげる巽先生と、カウンターの中の辻調の先生。
お隣にいらっしゃるのは一文字厨器の田中諒さん。この度大変お世話になりました。

以前掲載した「第13講 能登半島地震と富山湾の幸」は、能登半島地震から間もない時期に行った回でした。
あれから2年。辻調は能登と縁が深く、この間も教員たちが現地を訪れてきました。復興に向けて歩む現地の声に触れるなかで、「また連載で能登を取り上げたい」という話が自然と出るように。そんな思いから、今回の「特別編」では能登の食材を使おう、ということになりました。

能登のブリ!

教材の進藤先生によると、処理の技術はもちろんのこと、納品の仕方がとても丁寧だったのが印象的だったそうです。
魚介類と向き合い続けてきた土地ならではの、長年の積み重ねが感じられたといいます。

料理はこちら。
ブリの田舎造り、ブリ大根、ブリしゃぶ、ブリを使った「めった粕汁」、そして一緒に送ってもらったカワハギを蒸し物に。

豪快に切ったブリを、粗くおろした大根で和えたのが「田舎造り」。
おろしたてのワサビをたっぷり添えて。これは準備段階では予定になく、当日突然出てきた一品でした。

こちらがブリしゃぶ。
もちろん一文字厨器の包丁をお借りして、切り口を滑らかに美しく。
つけタレは、ちり酢と、安場先生特製の「いしるドレッシング」を用意しました。

「めった粕汁」とは聞きなれない料理名です。石川県の郷土料理に、サツマイモを入れるのが特徴の「めった汁」という具だくさんの汁があり、そこに酒粕を加えた一品です。だしはブリから。鮮度のよいブリでとると、驚くほど臭みがなく、広がるのは澄んだうまみだけ。だしのとり方、なんとなく大阪の船場汁を思い浮かべます。能登×大阪の合作ですね。

こんな機会でもないと、みんなで鍋を囲むこともないので、ブリしゃぶはとても楽しい時間でした。
巽先生の一口目を見つめる辻調の先生たち(笑)


湯川先生

安場先生

松島先生

食材とともに、今回どうしても欠かせなかったのがお酒です。
能登の鶴野酒造店の代表銘柄「谷泉」を合わせました。

鶴野酒造店は、震災で酒蔵や店舗、住居が全壊するという大きな被害を受けながらも、14代目蔵元で蔵人の鶴野晋太郎さん、鶴野薫子さん兄妹が酒造りを続けています。現在は酒蔵の再建を目指し、全国各地の蔵元と協力しながら共同醸造というかたちで「谷泉」を世に送り出しています。その味わいは、爽やかでフルーティー、口当たりはやさしくほのかにシュワっと。困難のなかから生まれたとは思えないほど、晴れやかで清らかな一本です。ちなみに「めった粕汁」には、谷泉特別純米の酒粕を使いました。

また食材の手配にあたっては、能登の漁師集団「日の出大敷」の皆さんにもご協力いただきました。

真の復興にとって、いちばん怖いのは「無関心」だと言われます。
だからこそ、こうして食材を手に取り、味わい、語り合うことが、ささやかでもつながり続ける力になれば――そんな思いも込めた回でした。
美食地質学35講は、『毎日新聞』夕刊、あるいはデジタル版で掲載されています。ぜひご覧ください。

次回は、4月7日(火)の『毎日新聞』夕刊で掲載予定です。お楽しみに。