【学生ブログ】昆布文化を守る難しさ
こんにちは。辻調理師専門学校 高度調理技術マネジメント学科3年の吉田月です。
今回は「食と環境ワークショップ」の授業で実施された、ゲストスピーカー講義をご紹介します。
今回のゲストスピーカーは、こんぶ土居より、土居純一さんにお話をいただきました。
調理師を目指すうえで、切っても切り離せない、だしの材料昆布のお話ということで、
集中して聞いている学生も多かったように思います。
昆布は主に北海道で生産されていますが、私自身も北海道出身で、非常に身近に感じることができるお話でした。
ここで少し、こんぶ土居についてご紹介いたします。
こんぶ土居は、地下鉄 長堀鶴見緑地線・谷町線の谷町六丁目を降りたところに店舗があります。
創業は1903年、100年以上続く老舗の昆布専門店になります。
公式HPには、「こんぶ土居では、製造に際しまして、最高級の伝統調味料のみを使用し、
加工助剤やキャリーオーバー等表示を免除されているものも含め一切の食品添加物を使用しておりません」とあり、
非常に強い品質へのこだわりの中で製品を製造していることがわかります。
今回のスピーカーとしてお越しいただいた土居純一様は、こんぶ土居の4代目にあたります。
『なぜ昆布屋が大阪に?』
北海道が主な生産地である昆布ですが、北海道で昆布屋というのは正直あまり記憶にありません。
一方で、土居さんは大阪には昆布屋が多くあると言います。
その理由は、貿易の歴史にあります。
江戸時代中頃から、北海道と本州の交易の要は北前船と呼ばれる船になっていました。
この船は北海道小樽を出港し、北陸側の海を通り瀬戸内海、最終的に大阪に到着します。
したがって、大阪には多くのものが集まり、それに伴って、取り扱う店が多くできていきました。
日本昆布協会も大阪にあります。
『昆布の種類』
昆布は、一口に北海道といってもとれる場所によって種類が異なります。
日本で特に使用されている昆布は4種類。羅臼昆布、利尻昆布、真昆布そして日高昆布です。
土居さんは、昆布の種類と消費地域にはつながりがあるといいます。
大阪では真昆布、京都では利尻昆布、富山では羅臼昆布
そして、関東以北では日高昆布が主に使用されているそうです。
これ以外にも、長昆布、厚葉昆布、細目昆布があります。
それぞれの昆布には特徴があり、自分の狙った味や食感を選択できるように学ぶ必要性を感じました。
『減ってきている日本の昆布』
現在、日本の昆布はその数をかなり減らしています。
30,000t近くあった昆布の生産量は、30年余りで8,300tにまで減ってきています。
土居さんは、2つの大きな理由があるといいます。
1つ目は、海水温度の上昇です。
地球温暖化によって、陸の気温だけではなく、海の温度も上がっています。
その差は2〜3℃と一見そこまで大きくありませんが、
海にすむ魚はその数度の差で、大きく生息範囲が変わってきています。
その1種であるアイゴは、近年北海道にまで生息地域が北上しており、大量の昆布を食べてしまっています。
こういった、海の海藻がなくなっていくことを磯焼けといいます。
また、海水温度の上昇によりウニも大量に発生しています。
北海道にはバフンウニと呼ばれるウニが主に生息していましたが、近年ではムラサキウニが増えています。
ムラサキウニはバフンウニよりも移動が速く、その食事量も多いため、磯焼けする地域が増加していると言います。
これを解決するために、海を網で区切り、魚が入らないようにする、ウニを駆除するといった活動が行われています。
自分たちができることとして、こういった活動への参加は非常に現実的だと思います。
2つ目は、海の貧栄養化です。
土居さんは、文化の発展の中で下水処理技術が高くなったこと、
また、海産物の多くが産業廃棄物として処理されており、
海に帰る栄養が以前よりも少なくなっていると言います。
これは、海で発生する赤潮が少なくなっていることからも、考えられます。
赤潮は、漁業において深刻な被害をもたらす場合もありますが、
一方で、プランクトンが大量に発生できるだけの栄養が海に存在するというふうに考えられます。
海から獲ったものを、陸の生産物と同じように処理することが栄養の循環を妨げているというのは、
今までの自分にない発想だったので、非常に良い学びとなったと思います。
こうして、日本で生産量の減っている昆布ですが、この減った分中国からの輸入が増えていると言います。
現在、日本の昆布の2割は中国産が占めているそうです。中国では、昆布の養殖が盛んになっており、
土居さんは実際にその現場を見られたそうですが、奥の見えないところまで一面に浮きが浮いているそうです。
今後も、昆布の生産量は減っていくのではないかと聞き、急激な自然環境の変化の中で、
日本の出汁文化・伝統を自国で賄えなくなっているという現状の難しさを今回の授業を通して感じました。
~プロフィール~
辻調理師専門学校 高度調理技術マネジメント学科3年
吉田 月
北海道出身、中国料理専攻


