学生たちは学内を飛び出し、秋の学びへ!〜校外学習 in 和歌山〜
皆さん、こんにちは。
辻調理師専門学校、調理師本科の山崎和彦です。
10月。朝の空気が少しひんやりとして、木々もほんのり色づきはじめました。
空は高く、澄んだ青が広がり、気づけば季節はすっかり秋。
窓から差し込む柔らかな陽の光にも、どこか落ち着いた空気を感じます。
「食欲の秋」「芸術の秋」「学びの秋」ーーいろんな"秋"がありますが、
私たちにとってやっぱり一番しっくりくるのは「食欲の秋」です。
最近の学生たちは授業の合間に
「この前食べたランチ、すごかった!」「この盛り付け、真似してみたい!」とスマホの写真を見せ合っています。
教室の外でも"食を探求する目"がどんどん育っているのを感じます。
今回は校外学習を紹介します。
普段の授業で学んだ知識を教室の外に広げ、実際に「食材の原点」に触れる特別な一日。
行き先は、果物の宝庫・和歌山県紀の川市です。
全国農協観光協会の皆さまのご協力のもと、柿とみかんの収穫体験を中心に、
農家の方々の仕事や地域の魅力を体感しました。
■ 出発の朝、期待に胸を膨らませて
バス乗り場に集まった学生たちは、普段と変わらない表情ながらも、どこか心が弾む様子です。
「柿もみかんも、どんな味だろう」「どれだけ収穫できるかな」と、自然と会話が弾みます。

大型バスに乗り込むと、添乗員の長瀬さん、納谷さんからあいさつ。
バスの中では、友人同士でワイワイとおしゃべりしたり、窓から風景を眺めたり、
朝が早いので眠っていたり......。校外学習という特別な一日の始まりに、笑顔があふれます。
途中のサービスエリアでは、早くもお土産選びや軽食を楽しむ学生も。
団子やソフトクリーム、たこ焼きを味わう姿は、まさに「食欲の秋」を体現しています。

■ 黒い柿との出会い
最初の目的地は、紀の川市の柿農園。迎えてくださったのは、農家の岡さんとJA和歌山の石梅さんです。

岡さんの畑では「紀の川柿」という珍しい黒い果肉の柿を育てています。
渋柿に1つずつ固形アルコールの入った袋を掛けて渋抜きをします。
手間を惜しまないその姿に、学生たちも真剣なまなざし。
試食では「すごく甘い!」「初めて食べた味!」と感動の声があがります。

一方、「渋柿」も体験用にご用意いただき、うっかり口にした学生は「うわっ、渋い〜!」と大騒ぎ。
それでも「どれどれ、俺も!」と次々チャレンジするあたり、探究心は立派です。

いよいよ収穫体験へ。
岡さんから「大きくて色の濃い柿を選ぶといいよ」と教わり、学生たちはハサミを手に畑へ散らばります。
大きな柿を手に「家族に食べさせたいな」と話す学生の笑顔が印象的でした。

■ 太陽と海風に育まれた"ゆらみかん"
次は、みかん農家の中村さんの畑へ。
見渡す限りオレンジ色の実が輝き、まるで秋の絨毯のよう。
ここで収穫するのは「ゆら」という極早生みかん。
植樹から6年目という若木ながら、立派に実をつけています。
中村さんから「この袋に入るだけどうぞ!」「食べ放題です」と聞くやいなや、
学生たちは歓声を上げて一斉に畑へ。
「10個食べた!」「まだ食べられる!」と笑いながら、あっという間に袋いっぱいに。
太陽の光と潮風の香りが混じった、和歌山ならではの味わいを存分に楽しみました。

■ 幕の内弁当でほっと一息
お待ちかねの昼食タイム。大部屋に並んだのは彩り豊かな幕の内弁当。
旬の食材が詰め込まれたお弁当を前に、「今日も勉強になるなぁ」と言いつつ、みんな黙々と完食。
「幕の内」という名前は、芝居の"幕の合間"に食べたことから生まれた言葉ですが、
今回はまさに"午前と午後の収穫の合間"にぴったりの一休みです。

■ 最後は「めっけもん広場」でお買い物
午後の最後の目的地は、JA紀の里の直売所「めっけもん広場」。
新鮮な野菜や果物がずらりと並び、学生たちは大興奮。
「この野菜、授業で使ってみたい」「家で料理してみよう」と話しながら、
両手いっぱいに買い物袋を抱えていました。

私もつられてブロッコリーやすだち、無花果をお土産に購入。
地元の方との会話を楽しみながら、食材が生まれる"現場の力"を改めて感じました。
■ 体験から学ぶ「食の原点」
今回の校外学習では、青空の下で土に触れ、果実を手に取り、生産者の思いに耳を傾けることで、
学生たちは「料理の前にある物語」を学びました。
農家の岡さんや中村さんが語る「自然と共に生きる仕事の大変さ」。
その言葉は、きっと学生たちの胸に深く刻まれたことでしょう。
教室で包丁を握る日々も大切ですが、自分の目で見て、手で触れ、心で感じたことこそが、
料理人としての原点。これから扱うすべての食材に、今日の学びが生きてくるはずです。
帰りのバスでも笑顔と笑い声が絶えず、誰もが一回り成長したように見えました。
~プロフィール~
辻調理師専門学校 西洋料理担当
山崎 和彦
西洋料理の中でもフランス料理を主に担当しております。フランスのレストランで修業を積み、在アイルランドの日本大使公邸では公邸料理人としての経験もあります。その経験を生かし、学生の皆さんが料理人として成長できるよう、日々指導に励んでいます。どうぞよろしくお願いします!


