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辻調理師専門学校

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今こそ見直そう!プロの基本『衛生手洗い』

調理師本科

2025.10.28

こんにちは!
辻調理師専門学校で食品の衛生や安全についての授業を担当している東條です。
今回の授業では、学生のみんなに「手洗いの実験」を通じて、
「清潔とは何か」を改めて考えてもらいました。

すでに、辻調理師専門学校に入学して半年。
また、このクラスには、製菓学科から進学した2年目の学生も在籍しています。
基本的な技術を習得しつつある今だからこそ、「食品衛生の基本の基」を、もう一度見つめ直してもらう授業です。

■ 実験での学び:菌の世界は思った以上に複雑

使用したのは「手形培地(一般生菌用)」。
手洗いの前後で菌の量や種類を観察し、どのような洗い方が有効かを比較しました。 



また、参考に「手形培地(黄色ブドウ球菌用)」で、傷口に存在しているという食中毒の黄色ブドウ球菌も確認することにしました。
結果をみてみましょう!

◎微生物実験は個人差や環境要因が大きく、再現性が低いことを確認。
→人によって手洗いは全然違うよ!

             
≪実験結果①≫同じ実験でも人によって結果は異なる。

◎洗ったことでかえって菌が増えたように見える例も。
→ 洗浄によって手の「しわ」から皮膚表面に菌が洗い出される場合があるんだって!

≪実験結果②≫手洗い効果が低い、または増える場合もある。

◎通常は48時間後に観察しますが、授業での観察では1週間後になるので、カビが生えた培地も。
→ 空気中の真菌(カビ)など、環境の影響も観察されたよ!

≪実験結果③≫カビを確認!

◎傷ついた手には「黄色ブドウ球菌」を確認。(赤い培地が黄色に変色した部分)
→見た目では化膿していない傷口でも黄色ブドウ球菌は潜んでいます!(*_*;
 加熱後の盛り付けや製品の組み立て作業などは必ず衛生手袋だね!

≪実験結果④≫傷口に「黄色ブドウ球菌」を確認!

つまり、菌の世界は単純な見た目の「キレイ⇔汚い」では語れないのです。

■ 潔癖症を育てるのではなく、「正しく恐れる」ために
今回の学びは、学生のみんなに潔癖症的な衛生観念を押しつけるものではありません。
私たちが目指すのは、リスクを知り、「正しく恐れる」力を育てること。
菌の存在を過剰に恐れるのではなく、
「どこに菌がいるか」「どうすれば減らせるか」「何がリスクなのか」
を科学的に理解し、適切に行動する力を身につけていくこと。
それが、プロとして食品を扱う者に必要な"衛生の知識と姿勢"です。


■ 衛生管理の基本は「7S」にあり
食品製造での現場では、「7S」という言葉が衛生管理の基本になっています。(「5S」なら知っているかも?)
「整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾(しつけ)・清潔」
とくに、「洗浄」と「殺菌」は、手洗いにおいて非常に重要です。
"洗って終わり"ではなく、"洗って・拭いて・アルコール消毒"までが一連の手洗いであると、
学生たちは実感を持って学ぶことができたと思います。

■ 技術と同じくらい、衛生意識が大切
半年または1年半の学びの中で、包丁の取り扱いや食品への火の通し方、ずいぶん上達してきました。
でも、技術だけではプロにはなれません。
「おいしい料理やお菓子」には、「安心して食べられること」がセットで必要です。
今回の実験を通じて、学生たちは清潔さを"見た目"ではなく、"微生物レベル"で捉える力を育てたようです。


■ おわりに
衛生管理は、知識や手順(マニュアル)だけで終わるものではありません。
それを日々の行動として実践し、習慣として根付かせることが求められます。
・「見えない菌を意識する」
・「洗ったつもり」で終わらない
・「正しく恐れる」姿勢を持つ
この意識が、安全で安心な料理やお菓子づくりの土台になります。
これからも、辻調理師専門学校では技術とともに、
"プロとしての責任ある衛生習慣"をしっかり育ててもらいます。

~プロフィール~
辻調理師専門学校 専門講義科目グループ
「食品の安全と衛生」「食品衛生学」担当
東條 孝文

卒業しても、仕事はもちろん、普段の生活にも生かせるよう、趣味のダンスを生かして、
音とリズムでテンポよく学んで、楽しく身につけてもらえるよう頑張っています。