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毎日新聞連載 -美食地質学入門- 第50講「沖縄料理」

新聞
美食地質学入門

2022.09.07

9月6日(火)の毎日新聞(夕刊)に「美食地質学入門」が掲載されました。

テーマは「沖縄料理」

今回は沖縄料理店「てぃーあんだ 扇町本店」さんで対談が行われました。

料理がテーマになっている関係で、特定の食材を取り上げていませんが、日本本土(内地)と比べると、気候の違いや歴史的な経緯などから特色のある食材が多くみられます。

かつて弊校が2000年沖縄サミットの首脳晩餐会の料理担当を担わせていただいた時も、まずその素材の違いに戸惑った記憶があります。
結局、魚はアカジンミーバイ(スジアラ)を、肉は今や有名になった石垣牛を選択しましたが、他にも色鮮やかな南方系の魚介類や、日本最古の豚食文化を有すると言われるだけの豚製品の種類の多さに驚かされました。

沖縄の豚といえば在来品種の「アグー」ですが、一時は絶滅の危機にあったものを復活させ、西洋の豚と交配させた「沖縄あぐー」やアグー同士を交配させた「キンアグー」などの「アグーブランド豚」が販売されています。
ちなみに在来種(アグー)同士で交配したものは「アグー」を名乗ることが出来、他の品種と交配したものには「あぐー」の名が付けられています。
また、通常の3元交配の豚についても交配を重ね、「おきなわブランド豚」として販売しています。
今日は豚肉は4品に使用されていて、うち3品にはバラ肉が、もう1品にはロースが使われています。

※三元交配豚(三元豚)...3種類の品種を掛け合わせて作られた雑種の豚で、日本で食用に育てられている豚の主流。ランドレース(L)、大ヨークシャー(W)、デュロック(D)の掛け合わせが主流。

さて、本題の巽先生のお話は、新聞紙上及び毎日新聞ホームページをご確認ください。

料理の内容は、


▲スクガラス豆腐セット(左からタコの塩辛、スクガラス、ワタガラス)
 本土の豆腐よりずっしり重く、大豆風味が濃厚な島豆腐にアイゴの稚魚、タコ、カツオのワタの3種類の塩辛をのせた沖縄での定番。
 スクガラスは沖縄の方言で、「スク」がアイゴの仲間の稚魚のことで、「カラス」が塩漬けとのこと。
 アイゴというと太く鋭い棘を持つ魚でので、姿のまま食べるのはちょっと...、と思ってしまいますが、使われるのはまだ骨が柔らかい生後1か月の3cmほどの稚魚です。
 この稚魚の漁は、旧暦の6月1日、7月1日、8月1日の前後の大潮の時に限られるそうです。
 ワタガラスはカツオの内蔵の塩辛で、塩と泡盛で漬け込んだもの。沖縄版の酒盗。

堅豆腐の回に触れた通り島豆腐もその一つですが、伝統的な生しぼりからではなく煮しぼりの豆乳から作られるケースが半分以上に増えているようです。
また作り立てをすぐに販売するという習慣も、時代と共に変化を余儀なくされてきています。
豆腐を使った料理は上記を含め3品登場します。

※生しぼり...通常のように加熱(煮る)してから豆乳を絞るのではなく、加熱せずに生の状態から豆乳を絞る方法。


▲ゆし豆腐
凝固剤を加えてすぐのまだふわふわした状態で提供される豆腐です。


▲クーブイリチャー
 昆布をおいしく食べる代表格の料理。
 かつて沖縄の昆布の消費量は日本一でしたが、今ではかなり減ってしまっています。
 やはり食の欧米化の影響でしょうか?


▲スーチカ―
 豚の三枚肉を塩漬けすると余分な脂肪分が抜け、旨味が増す。程よい塩味がお酒とぴったり。シークァーサーを絞ってあっさりと。


▲ゴーヤチャンプルー
 島豆腐入りのチャンプルー。沖縄を代表するゴーヤはビタミンCがたっぷりで、苦みと力強い島豆腐の旨味が絶妙です。


▲ラフテー
 2日かけて泡盛でじっくり煮込んだこだわりのラフテー。
 とても柔らかく、口の中でとろけるおいしさ。
 お店№1の人気メニューなのだそうです。


▲ミヌダル
 豚のロースと黒ゴマと泡盛ベースのタレに漬込み、蒸し上げた琉球宮廷料理の中の一品。
 胡麻のコクと風味が効いた味わい深い一品。


▲沖縄そば(三枚肉の煮付け入り)
 そばといっても小麦粉で作った麺で沖縄で呑んだ後はラーメンではなく、沖縄そばが定番。
 豚とかつおのダシでアッサリといただきます。
 ちなみにソーキそばは、骨付きバラ肉(スペアリブ)の煮つけ入り。



合わせるお酒は、有限会社比嘉酒造さんの残波(ざんぱ)ホワイト。


『ザンシロ』の愛称で広く親しまれ女性にも高い人気で、全国にも多くのファンを持つロングセラー商品です。

使われる麹菌の黒麹菌(アスペルギルス・リュウチュウエンシス)は、気温の高い沖縄での酒造りに適しており、有害菌を排して泡盛酵母だけが働いてくれるという、まさにこの地にこの黒麹菌ありです。

次回10月のテーマは「しょうゆ」

どうぞお楽しみに。