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毎日新聞連載 -美食地質学入門- 第53講「コメ」

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美食地質学入門

2022.12.08

12月6日(火)の毎日新聞(夕刊)に「美食地質学入門」が掲載されました。

テーマ食材は


 お米には非常にたくさんの種類があり、その分類の方法も様々あります。
 特に日本においては主食であることもあり、話題や課題に事欠きませんが、今日は「日本人がお米を食べなくなっていること」からコメについて少し触れてみたいと思います。

●日本人がお米を食べなくなっていること
 最近の若者はあまりお米を食べないんだなあ、と思いがちですが、実は意外にも高年齢層の米離れが進んでいるとのことで、パン食や麺食が国民全体にいきわたった感があります。
 こうなるとやはり食料自給率のことが気になります。
 現状ほぼ100%自給できそうなお米ではなく、大きく輸入に頼っている小麦粉に依存している現状は、やはり心配です。
 そんな中、遠くアフリカでは日本人が米の栽培を根付かせようと、奮闘していると聞きます。(New Rice for Africa)
 実は米のポテンシャルは他の穀物に比べて高く、米(もみ)1粒から200~400粒が収穫できるとのことです。(栽培適地かどうかにもよるので、単純比較は出来ないでしょうが)

 消費量が減少している一方、求められるものは多種多様になってきており、色や香り、粘りなど用途別に品種が改良され、どんどん種類は増えていっています。
 うるち米、もち米という大きな分類以外に、例えば、寿司専用、カレーライス専用、リゾット用など用途に特化した品種も開発されています。
 また、「黒米」、「赤米」などの有色米も作付けされており、野生種に近いため古代米とも呼ばれています。
 インドのバスマティに代表される「香米」は、日本でもバスマティの改良種が作られており、在来にも「ヒエリ」という品種もあります。
 さらには、難消化性デンプンを多く含む米が開発され、血糖値上昇抑制効果が期待されるとのことです。


 米作りといえば土作りからはじまり田植え、秋の収穫まで、かつてはすべて人の手で行われてきました。
 重労働の軽減のため様々な機械が開発され、また雑草や害虫、病気との戦いに対しては肥料、農薬、品種改良と長い年月をかけて工夫や開発を続けてきました。
 雑草対策などのために合鴨を利用した農法を行うケースがありますが、最近では合鴨ロボットなるものも登場しています。

 また、田植えの作業を割愛するために、直播(ちょくは)という日本ではなじみの少ない方法も選択肢の一つとして考えられ、それに適した品種の改良も行われています。
 これは「直接播種」の略で、田んぼに苗を植えるのではなく種(もみ)を撒く方法で、畑のようなイメージです。


さて、本題の巽先生のお話は新聞紙上及び毎日新聞ホームページご確認ください。

今回の料理担当は、日本料理・長谷川晃先生です。
使用するお米は、新潟県の「上越コシヒカリ」と「魚沼コシヒカリ」。
一般財団法人日本穀物検定協会による食味ランキングで、どちらも昨年は特Aランクを獲得しています。

 日本で最も生産量が多い品種がコシヒカリですが、稲の病気の中で最も被害が大きく怖い病気である「いもち病」に抵抗性を持つように改良された新たな品種群として、「コシヒカリBL」が開発され、現在は多くがこれに変わっています。


長谷川;今回は米を色々な形で加工するとともに、調理法を考えて料理を仕上げました。
私自身新潟県出身ですので、新潟らしい食材と共に料理を構成してみました。




▲前菜① うずみ茶碗蒸し べっこうあんかけ(魚沼産使用)
 茶碗蒸しの上におかゆを裏後したもので茶碗蒸しの表面を隠して、べっこうあんで仕上げました。
 まずは暖かいものを食べておなかを温めるとともに、食欲増進を促そうというのがこの料理のコンセプトです。
 混ぜると少し卵かけごはんみたいにもなるイメージです。


▲前菜② 穴子棒寿司 鴨旨煮板米はさみ巻き(上越産使用)
 穴子の棒寿司で寿司飯を楽しんでいただき、鴨旨煮では上越産のコシヒカリで米粉をつくり板状に焼き上げたものをアボカドと一緒にはさみました。
鴨の肉質と、アボカドのトロっとした食感の中にクリスピーな食感を足してみました。


▲焼き物  鮭味噌つけ焼き 大根べったら漬け (魚沼産使用)
 鮭は新潟から取り寄せた越後味噌を調味した後に、新潟の年越し魚であるサケを漬け込み焼き上げました。鮭の塩味とべったら漬けの甘味が楽しめる一品です。


▲べったら漬けは、魚沼産のコシヒカリで甘酒を作り、そこに塩漬けしてから干した大根を昆布、たかの爪と共に漬け込みました。


▲揚げ物 里芋と甘鯛の米粉揚げ 銀あんかけ(上越産使用)
 コシヒカリで米粉を作成して里芋は1度付け、甘鯛は2度付けして、米粉の食感と素材とのハーモニーを楽しむ一品です。




▲いくらご飯 (魚沼産使用) 
 魚沼産の新米コシヒカリを土鍋で炊いて、鮭からとれたいくらの醤油漬けと共に何杯でも食べられそうなごはんです。


▲甘酒アイスクリーム (魚沼産使用)
甘酒を自作してそこにあっさりの豆乳とこくのある生クリームを加えてアイスに仕上げました。甘さ控えめなので、甘いのが苦手な方でも食べやすい一品。年中おいしく頂けそうです。

合わせるお酒は、下越酒造株式会社さんの麒麟 山廃純米酒



次回1月のテーマは、「コマツナ」

どうぞお楽しみに。