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辻調理師専門学校

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「サンマの美味しさは塩焼きだけではありません!」~日本料理だけを学ぶ「日本料理学科」ブログ22~

日本料理クリエイティブ経営学科
日本料理本科

2021.12.16

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4月に日本料理本科(1年制)日本料理クリエィティブ経営学科(2年制)が
辻調理師専門学校の日本料理学科として開校しました。


今日は個人実習で「さんま」を卸し、串打ちして焼くことを全員が行います。


9時10分、授業開始です。「ひとり2尾ずつ卸すから各班の人数分取りに来て!」


まずはウロコ、内臓、頭を落としキレイに水の中でお腹を洗う「水洗い」から始めます。
これまで数々の魚を扱ってきましたがそれぞれの特徴に応じた水洗いの方法がありました。
さんまは身が非常に柔らかいので一言でいえば「身が割れないように、優しく扱う」ことを常に意識します。
そして今日は内臓を使って、さんまだからおいしい焼物に仕上げます。
「お~い、内臓はすてるなよ!」



さんまの形状は細長い!そして身が柔らかいため卸すときは「大名卸し」という卸し方をします。
先生!なぜ大名卸しというのですか? 
いい質問ですね(笑)
では簡単に説明しますよ。
さんまの中骨の上に沿わせて、腹身と背身の両方を一度に卸す。
この卸し方だと中骨に身が残りやすく大名のように「贅沢」だというところから名前がついています。

「へ~そうなんや、では、さんまを鯵のように腹・背・背・腹の順番に包丁を入れて卸すとどうなりますか?」
包丁を入れる回数が多くなり身が割れる原因となります。
その点、大名卸しは中骨に身が残りやすいけれど身割れさせず、きれいに卸せますよ。



では大名卸しスタート!刺身包丁を使い頭側から一気にスッーと卸す。素早い!


反対側の身も一気に行きます。スッー


さんまの腹骨は長細いため、刺身包丁ですき取ります。身割れがなくきれいな身です。
鮮度もバツグン、刺身でも食べられます。


あとは小さく細い血合い骨を1本ずつ抜き取れば、一切骨が無い状態となります。


各自2尾ずつ卸しましたが、平均こんな感じです。
大名卸しをする魚は他にサヨリ、カマスなどいずれも細長い魚ですが実は一番さんまが難しいのです。
理由は身が一番柔らかく力を加え過ぎたり、包丁の角度が悪ければ中骨が途中で切れるからです。
そのため、さんまが上手に卸せるということは練習しなくてもサヨリ、カマスなど簡単に卸せるということなのです。


これ何かわかりますか?答えはさんまの内臓です。まず包丁で細かく叩き、裏ごします。
さんまと言えば丸ごと焼いた「塩焼き」が一般的ですがその際、内臓も一緒に焼き食べますよね。
ほろ苦さとコクがあり、とてもおいしいです。私も大好きです(笑)
今日はこの内臓と酒、みりん、醤油、卵黄を混ぜ合わせてタレを作ります。


これが内臓入りのタレです。ドボドボドボっと一気にさんまの上からかけます。
先生「鯛や鯵などの魚にも勿論、内臓はあるけれどこのようにタレに混ぜたりしますか?」
しませんね。さんまは細長い形状のため鯛など大型の魚とは内臓の種類と数に違いがあります。
さんまは偶然にも人間が食べて丁度おいしい内臓であったということです。
夏の代表的な魚、鮎の塩焼きも内臓ごとパクリと食べますが同じことが言えますよ。


このまま10分間、タレに漬け込むとおいしく味付けされます。


10分経てばザルに引き上げ、自然に汁気を切ります。


串を打つ前に包丁で細かく切り込みを入れます。
そうすることでまず焼き上がったときにきれいな模様となり
いかにも「プロの仕事!」といった感じに仕上がります。
次に細かく皮を切っているので箸で食べるとき切りやすく、お客さんにとても親切ということです(笑)



自分で卸した2尾分すべて串打ちします。
身の両側から丸めて串を打ちますがこれを「両づま折れ串」を打つと言います。


これも両づま折れ串ですが形状が違います中央辺りは波打つようにひねります。



2種類の両づま折れ串の完成。見比べると違いがわかります。


自分のさんまは自分で焼きます。まずは盛り付けて上になる方からしっかりと焼いていきます。


しっかりと焼き色が付けばひっくり返します。
「先生、焼き色というか、焼き過ぎて焦げていませんか?」
大丈夫です!ちゃんと理由があります。
タレにさんまの内臓が入っていますが、この内臓が焦げやすく色が濃くつきやすいのです。

だけど食べると全然、焦げ臭くもなく苦みも感じません。
これくらい焼き色が付いているからこそ、おいしいのです。食べればわかるよ(笑)


両面とも焼き上がれば最後にタレを1回かけて、サッと焼けば表面がピカッとツヤツヤに仕上がります。


焼き上がればすぐに串を抜き器に盛り付けます。


同じ両づま折れ串と名前が付きますが見た目が全然違いますよね。
手前のさんまは中央辺りが凹んでいるのでそこにウニとか卵生地をのせて焼くときれいですよ。

串を使えばいろいろ変形させた状態で焼き上げることができます。
日本料理は立体感のある盛り付けが好まれます。
さんまの塩焼きも三枚に卸して串を打って焼けば見た目の印象が変わりますよね。
そして家庭料理との差をつけることができますよ。


最後は熱々で試食をしょう。初めて食べるさんまのたれ焼きの味はどうかな?
「うまい!なんだこの味は!」と左手が訴えています(笑)


「焼き色が濃くつき過ぎて苦いかなと思って食べたけど、全然苦くありません。」
2尾分全部食べちゃえます(笑)


授業は単に作る、食べるだけでなく串を打つときのポイント、焼くときの注意点などを
忘れないようにしっかりとプリントに書き留めていきます。
これで180分間の個人実習は終了。お疲れ様でした!


~プロフィール~
辻調理師専門学校 日本料理
小川 健
香川県出身。
私は今から35年前に辻調理師専門学校を卒業しました。
その当時と今も日本料理の基本は変わっていません!
揺るぎない基本をしっかり学ぶことが技術と知識を向上させる近道です。
日本料理に興味のある人、興味はあるけど自信のない人も大丈夫!
日本料理本科、日本料理クリエィティブ経営学科では
「難しいことが簡単にできるようになる」授業内容になっています。
どんな授業だ?これからも授業の様子はブログで紹介していきますよ!ご覧ください。