OSAKA

辻調理師専門学校

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「辻調は器の授業もすごいぞ!」 ~日本料理だけを学ぶ辻調 ブログ5~

日本料理クリエイティブ経営学科
日本料理本科

2023.06.01

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2021年4月に日本料理本科(1年制)日本料理クリエイティブ経営学科(2年制)が
辻調理師専門学校の日本料理学科として開校しました。
この2つの学科では日本料理の会席料理を中心に学びます。



今日は日本料理クリエイティブ経営学科2年生で学ぶ
科目名「日本食文化概論Ⅱ」の中で行う「輪島漆器の基礎知識」の授業を取り上げてみました。
では本日の外来講師をご紹介します「輪島キリモト」桐本泰一 先生です!

桐本先生の家系は先祖代々、石川県輪島にて、200年以上「木と漆」の仕事に携わってきました。
江戸時代後期から明治・大正にかけては輪島漆器製造販売を営み、
昭和の初めに木を刳る(えぐる)ことを得意とする「朴木地屋・桐本木工所」に転業。
漆器木地業としてのノウハウを蓄積して2015年 商号を「輪島キリモト」とし、
木地業を生業にしながら、多くの力ある職人さん達と一緒に、
木工製品や漆の器、小物、家具、建築内装材に至るまで、
木と漆が今に暮らしにとけ込むようなモノ作りに挑戦し続けています。桐本先生は7代目当主となります。


かの有名な北大路魯山人は「器は料理の着物である!」という名言を世に残しましたが
これを訳せば、いくら素晴らしい料理でも盛り付ける器が良くなければ、美しく見えない!ということです。
この学科の学生は昨年1年間、日本料理の基礎をしっかり学んできました。
プロの料理人には器の知識が必要なこともわかっています。

「桐本先生、今日は私たちにどんなことを教えてくれるの!」といった感じで見つめます。
学生の目が真剣です!キラッぴかぴか(新しい)


器には主に陶磁器、ガラス、金属、漆器などがありますが今日は「漆器」について学びます。
まずは漆器の特徴と優れている部分を説明します!
「素材は木でできているため手に馴染み、唇には柔らかく、見る目も美しく、人の感性を豊かにしてくれます。
特に会席料理には欠かせません!」
確かに吸物を盛り付ける椀、折敷は塗りものです。その中でも高級品と言えば輪島塗ですね。


手(パー)先生!そもそも「漆器(しっき)」とは何ですか?

いい質問ですね。まずはそこからやね。
漆器とは木や紙などに漆(うるし)を塗り重ねて作る工芸品のことです。
狭義には「漆を塗った器」の意味ですが、広義では漆が塗られた漆工品全般が含まれます。


手(パー)先生!じゃあ漆(うるし)って何ですか? 

それを説明しないと始まらんね。

まず漆という木があります。
木の表面を傷つけるとそこから乳白色の液体(漆)がにじみ出ますが、そのうち漆は黒く変色して固まります。
この漆を器に塗り重ねていくわけですが、みなさんが想像する以上に手間と時間がかかります。


漆器の器が完成する工程としてまず木を削る、整形などして器の形にします。
学生全員が実際に見て、触ってみます。
これらすべて手作りとは思えないほど形が統一されていますね。

「ヤバい!」


オッ!器の縁に布が貼り付けてあるけどこれは何だろう? 
先生教えてください!

「器の縁や内側の底面など摩耗しやすい部分に、糊状にした漆で布を張り補強をします。
これを「布着せ」と言います。」
「麻布、寒冷紗(かんれいしゃ)という布を使用しており、
この工程を行うことで長く使い込んで傷んでも『直す』ことができるのです。」

へー漆器って素材は木なのに丈夫にできているのですね。


次の工程は器に漆を塗っていきますが1回塗って終わりではありません。
簡単に説明すると、まず器の凸凹をサンドペーパーで磨き、その上から漆を塗り(①下塗り)、乾かす。
またサンドペーパーで磨き、乾かしその上から漆を塗る(②中塗り)
同じことを繰り返すことで、漆の層が厚くなるのです。
各工程、完全に乾く時間も相当長いよ。

「見比べると、それぞれ厚みと色が違うことがわかります。」


重ねて見比べるとより、見た目の違いがわかります。
下塗り、中塗り後、磨いたもの、磨いていないものなどよく見ると微妙な差がわかります。


そして最後は「上塗り」と言って色づけ用漆を塗って乾かします。
漆の乾燥は20℃以上の温度と75%程度の湿度が必要で、
密閉した専用の箱の中などに入れて1日から3日間ほどかけて乾燥させるのです。

「触ると意外とがっちりと固く締まった感じがします。」


「この器で炊き立てのご飯を食べたら、美味しいだろうなぁ~」と表情が物語っていますねわーい(嬉しい顔)


では2つの器を見比べてみます。向かって左側の器が新品未使用です。

「エッ!右側の器の方がピカピカしているので新品だと思いました。」

漆の器は使った後、洗いますがその後フキンで拭くよね。
それを何度も繰り返すことでツヤがでてピカピカになるのです。

「使いこむほど味がでるとはいいですね。」



ここで珍しいものを見てもらいます。
以前「ルイ・ヴィトン」とのコラボで漆塗りの小物入れを作りました。

「先生値段はいくらですか?」

16万円で抽選販売しましたがすぐに完売でした。

「あッ!ルイ・ヴィトンのマーク見つけた!」


ではここで実験をします。
素材の違う器が5種類あります。金属、磁器、ガラス、プラスチック、漆です。
全ての器に60度の湯を同時に入れます。一番保温時間が長く保たれるのはどれか確かめてください。

✋先生やりたいです! 

~どうぞ どうぞ~ 

「オッ、やっぱ漆だよね。何となくわかっていたけど」ネタバレです。

漆は保温性にも優れているのです。
日本料理で吸物を提供する際は漆の器で提供しますが、客には熱々の温度で提供したいものです。
これは理にかなっていますね。


180分の授業もあっという間に終了となりました。
今日は「漆器」についての学びでしたが
難しい内容をできるだけわかりやすく、そして終始楽しい授業をありがとうございましたわーい(嬉しい顔)


授業終了後も桐本先生への質問が続きました。

「先生!私は昨年の10月フィールドワークに参加したときお会いしています。
その際、先生のお店で見学させていただきました。」
「あれから輪島塗にとても興味を持ちました。」

そうでしたか!それはありがとう。

日本料理クリエイティブ経営学科、及び本科生は毎年学校を離れて
10月(3泊4日)に石川県能登島にフィールドワークへ出かけています。
*フィールドワークは本科授業とは別で希望者のみが参加します。(参加料金別途必要)

桐本先生の経営されている「輪島キリモト」にも毎年お邪魔させていただいています。

その時の様子をブログで確認ください。ここをクリックして!↓
https://www.tsuji.ac.jp/college/chorishi/blog/cat1278/no318.html



~プロフィール~
辻調理師専門学校 日本料理
小川 健
香川県出身。
私は今から35年前に辻調理師専門学校を卒業しました。
その当時と今も日本料理の基本は変わっていません!
揺るぎない基本をしっかり学ぶことが技術と知識を向上させる近道です。
日本料理に興味のある人、興味はあるけど自信のない人も大丈夫!
日本料理本科、日本料理クリエイティブ経営学科では
「難しいことが簡単にできるようになる」授業内容になっています。
どんな授業だ?これからも授業の様子はブログで紹介していきますよ!ご覧ください。