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Restaurant L'ARRIVAGE (レストラン・ラリバージュ)

フランス校 食べ歩き日記

2024.01.13

今回紹介するお店は、南フランス・セートにある「Restaurant L'ARRIVAGE」 (レストラン・ラリバージュ)です。

シェフのJordan Yuste(ジョルダン・ユスト)氏は25歳で料理の道に進み、フランス南部ニームにあるミシュランガイド星付きレストランのシェフでM.O.F.のJérôme Nutile(ジェローム・ヌティル)氏のもとで修業されました。南フランス・メーズにあるレストラン「Les Palmiers」(レ・パルミエ)でシェフ・パティシエとして働き、その後レストラン「Le Mas」(ル・マ)のシェフを務めます。そして、2017年に自身のレストラン「L'Arrivage」(ラリヴァージュ)をオープンされました。
2019年には、ゴ・エ・ミヨの地域のヤング・タレント賞を受賞し、テレビ番組「トップシェフ」に参加することで注目を集めます。2021年にゴ・エ・ミヨのヤング・ナショナル・タレント賞を 受賞。2023年6月にミシュランガイドで一ツ星を獲得した今注目のレストランです。


メニューは、昼55€、夜4品99€、7品149€のコースがあります。その日に採れた地元の食材で内容が変わります。今回は、夜4品のコースと、お料理に合わせてワインのペアリングのコースをお願いしました。


アミューズ・ブーシュ3種。
アミューズ・ブーシュとは、食前酒とともに食べるひと口大の料理のこと。


"サバの骨のチップス、燻製したサバの角切り、レモンのジュレとレモンの果肉"

乾燥焼きされたチップスは香ばしくしっかりとした食感があり、燻製にしたサバとの相性がとても良かったです。強く香るサバをレモンのジュレと柑橘の酸味が口の中をさっぱりとさせ、次のアミューズ・ブーシュに繋げていました。


"カツオのスフレ、香草入りのクリーム、表面を炙ったカツオ、シトロンキャビア"

直火で炙ったカツオの味わいは、スフレの中にある香草クリームと合わさることで、口の中に優しく残ります。日本人には懐かしいスナック菓子の"おっとっと"を思わせるような魚の形をしたスフレにもカツオが使用されており、心地よい歯ざわりとカツオの香りが口いっぱいに広がります。シトロンキャビアの瞬間的な酸味が、ひと口の中でさらに味わいを変化させる一品でした。


"ロマネスコのタルトレット、マグロのタルタル"

小さなタルトにはロマネスコというカリフラワーのような野菜を使用しており、ロマネスコと粉、水をミキサーで練り合わせた生地はとても薄く焼き上げられています。口に入れた時の楽しい触感の後、噛めば噛むほど口の中に残るのは、マグロの爽やかなうま味です。キャビアの塩味、小型みかんのクレモンティーヌの甘味ともバランスがよく、食材それぞれがとても活きたアミューズ・ブーシュ でした!

この3品を通して、魚それぞれの美味しさを引き出すための調理法と、それに合わせたカリッとした食感の違い、酸味の合わせ方がとても面白く、次の料理にとても期待しながら食事を進めていきました。


パンもレストラン自家製で、中はしっとりとしていて、クラストもしっかりと焼かれており、香りのいいパンでした。

お料理と合わせたワインを一緒に紹介します。


"牡蠣とロックフォール"

こちらで使用している牡蠣はレストラン近くの町Mèze(メーズ)産のもので、さらに金賞(MÉDAILLE D'OR)を受賞しています。また、ロックフォールとはフランスの代表的な青かびチーズで、南フランス・ラングドック地方の特産物です。
写真右側、お皿にある牡蠣は直火でさっと火入れされており、フレッシュな牡蠣の香りを感じます。火入れされた甘味のある洋ナシの上には、発酵させた酸味のある洋ナシとロックフォールが隠れされています。ロックフォールのほのかな香りが、牡蠣のクリーミーさと合い、この一品に華やかさを与えます。
写真左側、器に入った牡蠣はグラタンです。こちらはロックフォールをクリーム状にして牡蠣と合わせており、しっかり濃厚な味わいでした。


牡蠣に合わせたワインはラングドックの白『Le Seconde Souffle』。
すっきりとしていて、余韻は短く牡蠣の繊細な味、香りを損なわない味わいでした。
ソムリエの方に聞くと、"牡蠣のそれぞれの火入れが違うので、その焼き目を感じることができ、さらに牡蠣の濃厚なうま味をすっきりと感じることができる、料理とのバランスが取れたこのワインを選びました。"とお話しいただきました。


"マッシュルームとサバ"

マッシュルームのエスプーマ、マッシュルームの皮を使ったチップス、生のマッシュルーム、サバのタルタル、南フランスPic Saint Loup(ピク・サン・ルー)産の卵を使用した、低温の油でゆっくり火入れした卵黄。マッシュルームがメインの一品で、サバのタルタルはアミューズ・ブーシュでも出てきましたが、味・合わせた食材・食感の違いをお楽しみくださいという説明がありました。全体的にクリーミーで重厚感のある味わいでした。


クリーミーなマッシュルームに合わせたワインはボジョレの赤『Morgon』。
赤い実のフルーツのような酸味 が、お料理の濃厚な味わいに軽やかさを与えます。お料理だけで食べると、少し酸味が欲しいかなと思っていた時にこのワインと合わせることで、とてもいいバランスとなり感激しました!
シェフに"料理を考える時はワインとのバランスも合わせて考えているのですか?"と質問したところ、"作りたい料理、旬のもの、地元の食材を活かす料理を考えています。それと同時に食事はワインも合わせて楽しんでほしいので、ワインとのバランスも考えます。ソムリエもいい仕事をしてくれていて、いいチームで働くことができています。"とお話しいただきました。


"スズキとほうれん草"

ゆっくり火を通して身がふわふわなスズキに、ソテーしたほうれん草。下にはジャガイモのピューレが敷いてあります。ほうれん草のクリームソースと、スズキのうま味を煮詰めたソースをシェフ自らサーヴィスしていただきました。それぞれのうま味と濃厚さが合わさり、まとまりの良い一品でした。


スズキに合わせたワインは、ラングドックの白『Le Renard Blanc』。
甘いリッチな香りと酸味のある白ワインが淡白なスズキとバランスが良かったです。ほんのり香るスイカのようなベジタブル感ある香りが、ほうれん草との香りと重なりお料理との相性が良いワインでした。


"ライムとベルガモットのソルベ、仏手柑のシロップ漬け、柑橘とマンゴーを発酵させたジュースと和えたサリコルヌ"

柑橘を使用しすっきりとしたソルベでした。サリコルヌという植物の塩分が程よく甘さを感じさせ、食感も楽しいプレデセールでした。


プレデセールに合わせたのはレストラン近郊で製造されている『VODKA』。
こちらのウォッカはヨード香を感じ、プレデセールで使用されているサリコルヌと重なります。アルコール度数が高いお酒なので、ひと口飲むと口の中がすっと切り替わりました。


"タルトレットサブレ、リンゴ、キャラメルとトンカ豆の香りのアイス"

サブレ生地は最後まで存在感があり噛めば噛むほど焼けた香ばしさを感じます。発酵させたリンゴのエスプーマは口の中がすっきりとし、フレッシュなリンゴの角切りは少ない咀嚼で食べられるぐらいの大きさで、アイスと一緒に口の中で無くなる心地の良い食感です。アイスはトンカ豆の甘い香りがしますが、乳脂肪の少ないさらっとした舌触りで、口の中で甘い香りがすっと爽やかに広がります。キャラメルはCaramel・Laitier(キャラメル・レティエ)と説明があり、砂糖を焦がした苦さのあるキャラメルではなく、砂糖と乳製品を合わせてからキャラメルにした苦くないキャラメルです。
一つ一つのパーツは、爽やかで軽さがあり、くどくならないように工夫されています。サブレ生地があることで軽やかさの中にも食べ応えがありました。 料理でお腹が満たされた後でも、食べ進めることができました。バランスの良いデセールに最後まで満足でき、パティシエの私には大変勉強になりました。


デセールに合わせたワインはロワールの白『Le Paradis de Juchepie Chenin Sec』。
爽やかな甘さのある貴腐ワインでした。飲み進め、時間が経つにつれてリンゴの香りが際立ちました。"リンゴジュース入れましたか?"とソムリエの方と冗談を交えながら話すほど、香り高くなり、デセールとの相性もぴったりでした。


"Pâte de Languedocienne(パート・ドゥ・ラングドシエンヌ)"

南フランス・ラングドック地方の菓子で、別名Oreillette(オレイエット)と呼ばれています。揚げ菓子の一種で、一般的にはオレンジの花水で香りづけをしますが、こちらは海藻を練りこみ、ライムのジュレとライムの表皮で香りづけされていました。

地元の食材を魅力的に変化させた料理、それに合わせたワインやデセールが出てくるたびにワクワクさせられました。こちらのお店のコンセプト通り、幸せな気持ちになれる素敵なレストランにぜひ足を運んでみてはどうでしょうか。

【Restaurant l'Arrivage】

住所 13-15 rue André Portes, 34200 SÈTE
営業時間 水曜日~土曜日12h-13h15 19h30-21h.
https://www.restaurant-larrivage.com

restaurant.larrivage@gmail.com