毎日新聞「美食地質学」第27講 東北の隆起とやませ―馬肉、地鶏、せんべい汁
2025年7月1日(火)刊行の『毎日新聞・夕刊』に、「美食地質学」が掲載されました。
「美食地質学」は、食通のマグマ学者・巽好幸先生(ジオリブ研究所所長)と、辻調理師専門学校の教員が、地質学と美食の関係をテーマに、それにまつわるお料理とお酒を楽しみながら対談をおこない、理解を深めていくという企画です。
第27講のテーマは「東北の隆起とやませ ―馬肉、地鶏、せんべい汁」です。
東北に冷害をもたらし、米不足の元凶となるのが、夏に太平洋から吹きつける冷たい風の「やませ」。
今回はやませのメカニズムを学ぶとともに、やませとの闘いから生まれた食文化に迫りました。
>毎日新聞「美食地質学」第27講 東北の隆起とやませ ―馬肉、地鶏、せんべい汁
https://mainichi.jp/articles/20250701/dde/012/070/004000c(閲覧には会員登録が必要です)
対談は、辻調理師専門学校の日本料理・湯川徳之先生が担当しました。
巽先生(右)と湯川先生(左)
毎日新聞の松井記者は、かつて記録的な凶作となった年に、現地で取材をされたことがあるそう。そのお話を聞きながら、巽先生と湯川先生は当時の米不足の状況を思い出したようです。八戸や五戸など、「戸」がつく土地には、冷害からの凶作になんども見舞われた歴史がありました。食材の安定供給の裏には、生産に携わる先人たちのにじむような努力があるんですね。
テーマの食材は、馬肉と小麦粉せんべいと地鶏。今回作った料理を紹介します。
馬肉は青森の隠れた名産品。まずは二種盛りから。
ひとつはヒレの昆布締めで、もうひとつはなめろう風で提供しました。
さらにバラ肉を使って、夏野菜と湯葉ともに冷製の含め煮に。
南部せんべいは、青森県東部~岩手県北部の南部氏旧支配地域の特産です。
湯川先生からは、せんべいについての「へぇ~」なお話も飛び出しました。
写真は時間が経ってせんべいがふやけてしまったのですが(すみません!)、意外なことに歯ごたえがあって、ひとつの具として美味しくいただけました。「おつゆせんべい」という汁向きの小麦せんべいを使用。そしてだし汁は、現地の方が教えてくれたシャモロックで引きました。
根菜と地鶏の旨味が沁みる。
またシャモロックを使って香味焼きを2種作りました。
木の芽の香りを移した油に漬け込んで、中はしっとり表面をカリっと焼いたモモ肉と、中になんばん味噌を詰めたあと、北京ダック風の手法で仕上げた手羽先です。
料理は、日本料理の岡本健二先生が担当しました。
普段あまり扱わない食材でしたが、食感も香りも温度も彩りも全部楽しめるよう、いろいろ工夫を凝らしてくれました。
お酒は八戸酒造の超辛口純米「陸奥 男山」。
馬肉との相性バツグンと、産地の方からオススメされたものでした。
今回の調理サポートは、日本料理の山田友美先生が務めてくれました。ありがとうございます!
地方の食文化に接するとき、ここ数年は特に強く危機感を持つことが多くなりました。
地方創生にきちんと向き合うためやるべきこととは。
食文化や食材と、なによりそこに関わる人たちについて考えることがたくさんある回となりました。
毎日新聞のデジタル版でもご覧いただけるので、ぜひお目通しください。
次回の『美食地質学』は、8月5日(火)の毎日新聞夕刊で掲載予定です。お楽しみに。