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L'Atelier des Augustins (ラトリエ・デ・ゾーギュスタン)

フランス校 食べ歩き日記

2025.01.06

今回紹介するレストランは、ミシュランガイドで2024年に新しく1ツ星を獲得した、L'Atelier des Augustins(ラトリエ・デ・ゾーギュスタン)です。

このレストランはリヨンに1区にあり、フランス校のあるリエルグ村から車で50分ほどで到着します。プレスキルと呼ばれる地区はソーヌ川とローヌ川に挟まれたリヨンの中心街で、リヨン美術館や、歴史を感じさせるリヨン国立オペラ座など、17世紀の素晴らしい建造物がたくさん残っています。バルトルディの噴水がシンボルになっているテロー広場の近くにレストランがあります。

このレストランは、シェフを2名体制で経営されています。
1人目は、Nicolas GUILLOTON(ニコラ・ギヨトン)氏です。
ギヨトン氏は、元々ストラスブールの音楽院で音楽を学んでいました。しかし、料理にも興味があり誰かに料理を作る事が好きであった為、在学中にケータリングサービスやホテルでアルバイトを始め、いつしか大学を辞めて料理人としての人生を歩み始めました。その後、アルザスの3ツ星レストランAu Crocodile(オ・クロコディル)や、パリのGeorge V(ジョルジュ・サンク)で経験を積み、イギリスのロンドンや、アフリカのマリのバマコでフランス大使館の公邸料理人として働かれました。ギヨトン氏は、下処理をされて真空パックにされた食材を受け取り料理するだけでは不十分と考え、アフリカでは水上げされたばかりの魚の処理の仕方や、牛の屠殺から部位ごとの切り分け方を学ばれたそうです。

2人目はエグゼクティブシェフのThomas Belval-Sanna(トマ・ベルヴァル・サナ)氏です。
彼は20代前半の若さで、ギヨトン氏からL'Atelier des Augustinsのエグゼクティブシェフに抜擢され、任命されました。ベルギーの2ツ星Bon-Bon(ボン-ボン)、カルカッソンヌの2ツ星La table de Franck Putelat(ラ・ターブル・ド・フランク・ピュトラット)、フランス南東部の1ツ星Domaine de Clairefontaine(ドメーヌ・ド・クレールフォンテーヌ)で経験を積まれました。父親が料理人ということもあり幼いころから料理の世界に没頭し、イタリアに家族のルーツがある母親から味について学び、父親のレストランで技術を学ばれたそうです。

このL'Atelier des Augustinsは様々な大陸で腕を振るってきたシェフ達の経験から生産者との繋がりを大切にし、レストランから200km以内の食材を使用し、お客様に楽しい時間を過ごしてもらうためにレストランの音楽にもこだわり、料理やデザートの仕上げの多くをお客様の目の前で行うスタイルで提供されています。

店内は、高い天井と、木を基調とした天然素材を使用され、隠れ家のような雰囲気です。


最初にシャンパーニュをいただきました。

『Bérêche & Fils Brut Réserve』
シャンパーニュの主要3品種がほぼ均等にブレンドされており、20年分以上の収穫年が混ざっているリザーブワインを35%使用されています。辛口タイプでしっかりとした味わいを感じられるので、寒いこの時期にはぴったりのシャンパーニュでした。

最初にアミューズとして、3種類が出てきました。
1つ目は、なすの形をした器で提供された、きゅうりをベースにした冷製スープです。レモンの香りがする香草のレモングラスや、いちじくのオイルで香り付けされています。きゅうりの青々しさと、さっぱりとした酸味が合う食欲が増す1品でした。

2つ目は、栗を使ってタルト生地に見立てた一品です。
中央には、マッシュルームをプラリネ状にしたものと、卵黄のコンフィが乗せられており、とろっとした口当たりと、プラリネの香ばしさがよく合います。上には、オクサリスというハートの形をした少し酸味のある香草が飾られています。

3つ目は香草のファゴです。
ファゴとは、ブーケ状に束ねたものの事を指します。セルフィーユやディル、リーフトマトなどを、シブレット(あさつき)で束ねています。こちらを、柑橘風味の香草オイルに浸していただきます。とても面白いプレゼンテーションです。

続いて、パンとバターです。
バターはきのこの風味を付けたムース状のバターで、上にはムースロンという小さなきのこが飾られています。パンは自家製の発酵パンです。

1品目は根菜と菊芋の≪茶椀蒸し≫です。
フランス料理では茶椀蒸しの様な出し汁に卵を加えて蒸したものを、royal(ロワイヤル)といいますが、≪茶椀蒸し≫という料理名で提供され驚きました。

茶椀蒸しの部分には、味のアクセントとして赤味噌が使用されています。その上に、栗や黒エシャロットを合わせたピュレと、綺麗に菊芋が並べられています。ソースは、蕪のエキスをしっかりと煮詰めて、蜂蜜を加えています。使われている食材から、少し和食を感じさせられる様な一品でした。ソムリエの方に、今日の料理にはどんなワインが合うか尋ねてみると、「この後4品続きますが、本日は白、赤、白、赤と交互に合わせる事が出来ます。」と提案していただきました。
なので、まず白ワインはアルザス地方のリースリングを選びました。

『Riesling - SCHNEID La Rogerie 2022』
リースリングらしい白い小さなお花の香りで、あと味もすっきりしていて、前菜や魚料理との相性がとても良かったです。

2品目は、ビーツを使った色鮮やかな前菜です。

中央には柔らかく火を通したビーツの上に、燻製の香りを付けたビーツのピュレ、薬草の一種のアルテミスとセルフィーユのシャーベットが隠されており、その上にスライスしたビーツに薔薇のオイルを染み込ませて花のように飾っています。仕上げに、ビーツのジュースに肉のエッセンスを加えたソースを、目の前で注いでくれました。ビーツという野菜は根菜特有の土の香りがしっかりとあるので、肉の風味が加わったソースととても相性が良かったです。

ここで、赤ワインを合わせてもらいました。

『Domaine Gour de Chaulé GIGONDAS 2021』
ローヌ地方のジゴンダスの赤ワインをチョイス。
グルナッシュ80%で、スパイシーなアクセントと赤や黒い果実の風味もあり、滑らかなタンニンで、柔らかい味わいが楽しめます。ビーツの料理にはもちろん、メイン料理の合わせても負けない味わいでした。

3品目は日本ではなかなか見かけることの少ない、Sandre(サンドル)という川魚の料理です。

サンドルとリヨン名物のクネルを組み合わせた料理です。中央は、サンドルのクネルです。中にはローストされたフヌイユが包まれています。左側には、軽く泡状にしたsauce pochouse(ソース・ポシューズ)です。ポシューズとは、淡水魚をアリゴテという品種を使った白ワインで煮込む、ブルゴーニュ風のブイヤベースのような料理です。サフランやフヌイユの香りがありすっきりとした味わいのソースでした右側は、アブサンという薬草系リキュールを作る為に使われる、グリーンアニスを使った泡のソースです。こちらも爽やかさがあり、サンドルとの相性もとても良かったです。最後に、ソースを注いでもらって完成です。このソースは、ケイパーとフヌイユのソースで、全て一緒に食べると様々な香りを感じられて、複雑ながらも上品な味わいとなっていました。

最後に、メイン料理はcolvert(コルヴェール)です。

とても綺麗なロゼ色に焼き上げられた胸肉は、ジューシーでうま味がたっぷりとあります。つけ合わせは、フォア・グラのポワレと、赤いアンディーブの上に自家製XO醤をマスの魚醤で和えたもの。こちらはうま味がたっぷりとあり、鴨と一緒に食べるととても美味しいです。マッシュルームのピュレの内側には、濃厚な鴨のソースに発酵したカシスで酸味と甘味を加えたソースを流してくれます。そして、別皿で鴨のレバーとチコリをサラダ仕立てにしてさっぱりといただきました。

それでは、ここからデザートです。
まずは、お口直しにグラニテから。

こちらは青りんごとセロリのグラニテです。これだけでも爽やかに感じられますが、さらにミントの香りもあり、少し塩味も感じられるので、濃厚なメイン料理の後にはぴったりでした。

続いて、1つ目のデザートです。


こちらは、柑橘類でグラタンをイメージしたデザートです。ベースは、冬になるとマルシェにも並び始め、綺麗なオレンジ色が特徴のクレマンティーヌというコルシカ産のオレンジとレモンのマーマレードです。その他にも、ゆず、すだち、ライムなども使われており、柑橘の酸味と苦みをしっかりと感じることが出来ます。そこに、シャルドネ100%のシャンパーニュで作られたソルベが、柑橘の風味をより一層引き立ててくれます。そして、ピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールのシャンパーニュを使った温かいサバイヨンにライムで香りをプラスして表面をバーナーで焼いたものを、上からかける演出。皿盛りデザートならではの、冷たいソルベと温かいサバイヨンの組み合わせは優しい甘さとキリっとした酸味が癖になるデザートでした。

2つ目のデザートです。

こちらは、筒型に焼かれたチュイル生地の中に、栗と蜂蜜のソルベが詰まっています。チュイル生地やソルベには少量の塩味を感じられるので、甘すぎずに最後まで楽しむことが出来ます。仕上げに、酸味の効いたオリーブ油を使ったドレッシングをかけて、さっぱりと食べ進められるデザートでした。

最後にコーヒーとお茶菓子です。
イチジクを使った3種類のお茶菓子です。1つ目は、パイ生地を使ったパリパリの生地に、イチジクのコンポートを乗せ、飾りにはハッカに似た香りが特徴のヒソップという香草が飾られています。

2つ目は、こぶみかんの皮を一緒に混ぜ込んだ、イチジクのパート・ド・フリュイです。ドーナツ状にくり抜き、中央に黒ワインを使ったジュレと、ぷちぷちとした食感のシトロンキャビアが綺麗に飾られています。

3つ目は、とても面白いプレゼンテーションです。

こちらはイチジクの葉のシャーベットです。南仏の方でよくみられるアグランドー種のオリーブ油をつけていただきます。

今回のコース料理の中では、日本を感じさせられる食材や味が多くあり、少し日本を懐かしく思える体験でした。フランス校の近くにある美食の街のリヨンで、新たにミシュランの星を掴んだレストランで素敵な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

『L'Atelier des Augustins』

17, rue Hippolyte Flandrin, 69001 Lyon, France
Tel : +33 4 72 00 88 01
HP : → L'Atelier des Augustins · Restaurant 1 étoile Michelin Lyon · Cuisine locale et de saison