OSAKA

辻製菓専門学校

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夏の清涼☆お菓子でひんやり!?甘味のお話

洋菓子
製菓技術マネジメント学科
製菓衛生師本科

2021.08.24

皆さん、元気でお過ごしでしょうか。
8月中頃から雨が降り続き、朝の気温がやや涼しく感じられる毎日。夏の終わりが近いのかもしれません。

学生はというと、夏休みに入り、それぞれがやらなければいけないことに取り組んでいます。
就職活動、そして、いままで学習したことの復習や、ノートの整理、学生それぞれにやることは違います。

夏休み前、最後に学習した洋菓子の授業で、【メレンゲ】について学習しました。
世間一般のフランス菓子に対する認知度が上がり、いまやメレンゲという言葉自体が市民権を得ているような気がします。

Meringue【メレンゲ】※仏語読みでは【ムラーング】
―卵白に砂糖を加えて泡立てたもの。また、それを乾燥焼きにした菓子。―

メレンゲについて、このように製菓辞典には表記されています。
記載にあるように、メレンゲは洋菓子の世界では、お菓子をつくる過程において、生地の食感を軽くしたり、ふくらみを大きくしたりと、空気を含みやすい卵白の特性を利用して使われることがほとんどです。

今日は、そんなメレンゲの中でも、メレンゲを乾燥焼きにした【焼きメレンゲ】について話をしてみたいと思います。

焼きメレンゲ。
どのようなイメージをお持ちでしょうか。
メレンゲ自体を焼いて菓子にするとなると、通常のメレンゲより、少々加える砂糖の量を増やさねばなりません。生地などに使われる、いわゆる普通のメレンゲは、「卵白の分量2に対して、砂糖が1」というのがおよその配合になりますが、焼きメレンゲは、「卵白1に対して砂糖が2」で、格段に砂糖の割合が多くなります。
焼きあがったメレンゲの形を保つためには、これぐらいの砂糖の量が必要になってきます。

イメージの話に戻りましょう。
どうですか?焼きメレンゲのイメージとなれば、やはり最初に【甘さ】が来ると思います。砂糖の割合も多いですしね。
お菓子に甘味そのものを求める人は年々少なくなっていますので、【焼きメレンゲが大好き!!】という人も少ないと考えられます。しかも、この暑さだと、口の中が甘味のみで満たされることも遠慮したいところです。
皆さんは、【甘味】の暴力ともいえるこのお菓子に、おいしく食べるための、ある工夫がなされているのをご存じでしょうか。

一般的なメレンゲの配合材料として、メインとなるのは卵白と砂糖だけなのですが、焼きメレンゲにはコーンスターチをはじめとしたでんぷんが加えられています。
工夫の一つ目は、加える砂糖にでんぷんを混ぜ込むことで、食べたときの甘味の感じ方に、違いを出しているのです。

想像してください。
1つのキャンディを食べたときに、なめ終わるまでどれくらいの時間がかかりますか?
授業で、学生に同じ質問をした時に、3分とか5分という答えが返ってきました。
皆さんもそれぐらいでしょうか。
同じ質問です。角砂糖の場合はどうですか? 同じく学生に聞いたところ、10秒、30秒、と返ってきました。違いは、何でしょう。



キャンディは、1つの砂糖の塊と捉えてください。
逆に、角砂糖は?角砂糖は、小さな砂糖の粒に圧力をかけて1つにしたものですし、用途が用途だけに、当然溶けやすくなっていなければなりません。
この例にあるように、糖分はその大きさによって、甘味の感じ方や口溶けに変化が生じます。

焼きメレンゲにおいては、配合にでんぷんを混ぜ込むことで、含まれる糖分が焼成時に溶け合ってひと固まりにならず、細かいまま残ることとなり、それゆえ口にした時の口溶けが早くなります。

加えて、砂糖が口の中で溶けるときのある現象が組み合わさります。
それは、砂糖に含まれるブドウ糖が、唾液などの水分に反応し溶ける瞬間、吸熱作用が働き、口の中の熱をほんの少し奪う現象。口溶けの良い焼きメレンゲであるほど、口内の熱を一度に奪う量も多くなります。そうすると何が起こるのか。口内温度が低い状態では味をやや感じにくくなります。

つまり、口溶けが良いことで、味を感じる時間が短く、かつ味を感じにくくなる。
さらに味わいとして、でんぷんが混じり、細かく砕けた砂糖の甘味を吸熱作用と相まって、さわやかに感じられ、シュワっとした爽快感、ひんやり感を併せ持つ清涼感のある甘味へと転じるということです。
例えるなら、「ラムネ菓子」。これ以上のない例えでしょう。

もう一つの工夫、それは焼き加減です。
こちらはいたってシンプル。焼成温度を130℃程度にしてあげるということです。
多量に含まれる砂糖ですが、一定の温度以上に加熱すれば、【焦げる】。
つまり、砂糖がキャラメル化することで、味わいが徐々に、【甘味】から【苦味】へと変化します。スポンジ生地などを焼く温度は通常180℃前後ですが、それに比べて低温ながらも、しっかりと時間をかけて焼きこむことで、ただの焦げ味ではなく、菓子としての甘味を兼ね備えた苦味へと変化させる。
これこそが、フランス菓子ならではのおいしさであり、夏でも食べられる清涼感を伴った甘味なのです。

砂糖の味わい1つとってみても、製菓にはいろいろな発見が詰まっているものです。
未来のシェフパティシエである学生さんたち、お菓子の作り方だけではだめですよ☆
これからも製菓理論の授業、しっかりと聞いてくださいね。


余談ですが、この焼きメレンゲ、フランス人にとっては、すごく身近で慣れ親しんだお菓子の一つです。
パリには、焼きメレンゲ専門店もあるぐらい。
パリ市内の路地で親子が焼きメレンゲを食べながら歩いているのを見た記憶もあります。
また、専門店でなくとも、多くのパティスリーで今現在も売られていますし、
うずたかく積み上げられている焼きメレンゲをフランスで勤務していた当時、よく見たものです。

長くなりましたが、夏に【焼きメレンゲ】、おひとついかがですか?涼しくなれますよ。

~プロフィール~
辻製菓専門学校 洋菓子担当
森 貴行
京都出身。技術を教えながら、やる気に満ち溢れた学生と一緒にお菓子作りの毎日。
旅行好きで、寺社参り・御朱印巡りしながら、ご当地グルメ堪能が癒し。
花も好きで自前のカップとコースターは花柄。