OSAKA

辻製菓専門学校

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定番のお菓子 ~Saint-Marc【サン・マルク】は教科書である~ 

洋菓子
製菓技術マネジメント学科

2022.07.08

皆さん、元気でお過ごしでしょうか。
製菓技術マネジメント学科の2年生では、製菓衛生師試験の合格に向けて、各々で手抜かりなく準備を進めている最中です。

さて、実習の進み具合はどうでしょうか。

先日、【サン・マルク】というフランス菓子を学びました。どのようなお菓子か、ご存じでしょうか。

【サン・マルク】とは、ヴァニラとチョコレートのクリームを上下2層仕立てにし、
それらをアーモンドの入った口溶けの良い生地で挟んだシンプルな構成のお菓子です。
また、お菓子の表面を砂糖で焦がしつけ、苦味と食感の変化をつけているのも【サン・マルク】の大きな特徴でしょう。

さて、タイトルについて、触れてみます。
『~Saint-Marc【サン・マルク】は教科書である~』

何故【サン・マルク】は教科書なのか。
実際に、学生の工程を追いながら、紐解いてみます。

工程①:ビスキュイ・ジョコンド(アーモンドを使った口溶けの良い別立て生地)
→名前の由来が、有名な肖像画【モナ・リザ】の別の呼び名【La Joconde】(仏)ジョコンドである。
フィレンツェの名士デル・ジョコンドの夫人リザがモデルとされる。


生地の特徴として、アーモンドパウダーが入り、油脂分を多く含むため、
生地の歯切れの良さがありながら、口内温度によって溶けるような食感を持っています。
しかし、生地本来の軽さや【フワッとした食感】といったものは、
配合内の卵白から出来た気泡で形成されているのですが、
この卵白【メレンゲ】が油脂分を敵としているところ、
つまり、油脂に触れると泡がどんどん消えてしまう性質を持っているところが難点なのです。
この相反した性質を両立させなければならないところが、この生地の難しさ、といえるのです。

では、どうするのか。

まずは、【スピード】。これは実践において培う部分になります。
オーブンに入れるまでの時間を短くすることも大事です。
なぜなら、焼成による凝固までの間、気泡が油脂分に触れる時間自体が短くなるということですので。

次に、【卵の気泡力は、温度が人肌程度で最大に発揮される】
このことを学んでいれば、生地温とミキサーの速度を調整し、
油脂分(アーモンド)を含んだ生地でも少しずつ気泡を取り入れることができます。

最後に、【メレンゲ】です。
メレンゲは、卵白に砂糖を加えながら泡立てたものですが、砂糖の特性である【親水性】を利用しています。
そして、砂糖を卵白に加えるタイミングを最速にすれば、親水性によって、含む泡が非常に細かくなり、
かつ気泡を安定させることが出来、油脂分に触れても消えるタイミングを少しだけ遅らせることができます。
また、細かい泡になったことで、焼成時に気泡の熱膨張が緩和され、生地をゆっくりと持ち上げるので、
焼成後の生地の保形性を得ることができ、それが歯切れの良さにつながるのです。

卵の起泡性と、砂糖の特性、両方を利用した上で【作る速さ】までも要求。
・・・この生地、なかなかに恐ろしい。

更に、材料学。
この【ビスキュイ・ジョコンド】の原価は、通常のシートスポンジ生地に対して約6倍のコストがかかっています。
だからこそ学生は、失敗しないために、出来ることを知識で補おうとするのです。
昨今の材料価格高騰において、コスト意識と責任はつながっています。

タイトルに戻りましょう。
『~Saint-Marc【サン・マルク】は教科書である~』 
・・・いかかでしょうか。

工程②:上)シャンティイ・ショコラ(クラシカルなチョコレートクリーム)
    下)シャンティイ・ヴァニーユ(ヴァニラ風味のボンブ入りクリーム)

シャンティイ・ショコラは、チョコレートの持つ固形力を利用して、
出来上がりのクリームの固さを調整しなくてはなりません。
したがって、食材としての知識が必要で、チョコレートの融点はもちろん、
含まれるカカオ分%も判断に組み込まなくては正確なものは作れません。

シャンティイ・ヴァニーユも同じです。
これは、生クリームが本来持つミルキーな風味とコクに、卵黄のコクをプラスして作るクリームですが、
卵黄を、【パータ・ボンブ】という気泡をたっぷりと含んだものに変化させて作るクリームです。
このパータ・ボンブ、メインの卵黄には、アーモンドと同じく油脂分がしっかりと含まれており、
また含ませた気泡は非常に失われやすい性質を持っています。
したがって、クリームの軽さ、口溶けの良さの礎となる気泡を保つように混合しなければなりません。
具体的には、凝固剤であるゼラチンの融解温度の境界線、気泡の安定的な温度帯、
生クリームの適正な温度帯の3つの間を縫って、混ぜ合わさねばならないのです。
作り方だけを追うのであれば、レシピ本を見ればよいのです。

しかし、この3つの要素を紐解き、学習した知識で最適解を導き出すのが、学生の実践なのです。

工程③:キャラメリゼ(ビスキュイ・ジョコンドの表面に砂糖をまぶし、専用の道具を使って焦がしつける作業)

2種のクリームと生地という菓子構成に、砂糖の【着色性】を利用し、カラメル化させることで苦味と食感をプラスすることが、このお菓子の完成形です。
甘味と苦味については、1年次に味覚の授業で学習しています。砂糖という物質は、甘味の塊です。それを焦がせば、甘味から苦味に変化し、その2つのバランスも焦がし具合によって刻々と変わっていくこともすでに知っています。

もしよければ、こちらのブログもどうぞ
https://www.tsuji.ac.jp/college/seika/blog/cat1291/post_637.html
今回の実習はその先です。

複数の味の要素を【どの程度の割合で菓子内に共存させればよい】のかを想像できること。
2種のクリームと口溶けの良い生地、焦がしたキャラメルで、味のバランスを整えなくてはならない。
これらは2年次の製菓理論の授業で、学生が継続して学んできたことです。

『~Saint-Marc【サン・マルク】は教科書である~』
技術を磨くための実習もあります。
しかし今回は、学生自身が、習った知識を横断的に駆使し、作り上げねばならないお菓子。
まさに、教科書。
頑張れ、学生たち☆


~プロフィール~
辻製菓専門学校 洋菓子担当
森 貴行
京都出身。技術を教えながら、やる気に満ち溢れた学生と一緒にお菓子作りの毎日。
旅行好きで、寺社参り・御朱印巡りしながら、ご当地グルメ堪能が癒し。
花も好きで自前のカップとコースターは花柄。