LE RÉPERTOIRE DE LA CUISINE〈フランス料理総覧〉改訂版
本書は辻静雄の監修で1971年に刊行された、同名の書の改訂版である。
原書は1914年に初版が刊行されている。19世紀から20世紀の転換期に活躍したオーギュスト・エスコフィエは、彼が継承した古典料理を合理的に体系づけ、現代に伝える役割を果した。そのエスコフィエの金字塔的著作『料理の手引きLe Guide Culinaire』のエッセンスを抽出し、各料理の食材や作り方の概略を記したのが、レペルトワールの名で我が国でも親しまれてきた本書と言える。
ここに収録された約7000の料理は、調理法、食材、風味、盛付けに万華鏡的変化をつけ、献立を組み立てる能力が料理人に求められ、それらの要素の精妙な組合せが、フランス料理独自の魅力を生み出した時代があったことを物語っている。
膨大な引出しからレシピを選び、自在に操ることが優れた料理人の証という時代ではもはやないが、フランス料理の本質を宿したこの本は、フランスで今も読み継がれている。
現代料理の今後を考えるために、その基盤を提供したフランス料理を見直そうとする際、本書は貴重なデータベースとなる。また、AIを使えば、フランス料理の骨格の異なる視点からの分析も可能だろう。
50年をへて蘇ったこの翻訳版が、過去を未来につなぐ役割を果すとすれば、これほどうれしいことはない。
[担当]八木尚子(辻静雄料理教育研究所)
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