Pâtisserie S. (パティスリー エス)
今回私は、フランス南西部に位置する美食とワイン、そして歴史溢れる街Bordeaux(ボルドー)を訪れました。ワインの生産地として世界的に有名であり、周辺には数百年の歴史を持つワイナリー(シャトー)が点在しています。街の中心部には18世紀の優雅な建築が美しく残り、旧市街一帯はPort de la Lune(月の港)としてユネスコの世界遺産にも登録されています。
Miroir d'eau(ミロワール・ドー)は、薄い水の層に人や空、建物がまるで鏡のように反射します。水の鏡としては世界最大級で撮影人気スポットです。ちょうどミストが出ている時に遭遇できました!
実は日本でも人気なCannelé de Bordeaux(カヌレ・ド・ボルドー)は名前の通り、ここボルドー発祥のお菓子でもあります。
そんな街の中心地にあるお店、Pâtisserie S.にやって来ました。
ではまずシェフお二人をご紹介いたします。
Mme Satomi CHAN(さとみ・チャン氏)とM.Stanley CHAN(スタンレイ・チャン氏)は、共同経営兼シェフです。Mme SatomiはPierre HERMÉ(ピエール・エルメ)、Joël ROBUCHON(ジョエル・ロブション) と名だたる名店で経験を積んでいます。18歳で単身フランスへ渡り、2年間技術を磨きました。そこでキャリア構築の壁を感じ、一度日本へ帰国。東京でフランス料理の巨匠Joël ROBCHONのレストランで働くことになり、そこから13年間、ニューヨーク・台湾・モナコと世界中を飛び回りながら、彼の多くの店舗立ち上げに携わりました。台湾での勤務時にスー・シェフであったM.Stanleyに出会いました。彼もまたYannick ALLÉNO(ヤニック・アレノ)やシェフ・ブーランジェのFrédéric LALOS(フレデリック・ラロス)の下で修行を積み、フランス菓子の技術を磨きました。
2014年にJoël ROBCHONのGrande Maison(グランド・メゾン)をボルドーで立ち上げ、Mme Satomiはシェフ・パティシエ、M.Stanleyはシェフ・ブーランジェとして務めました。
2017年、彼らはボルドー中心部に念願のパティスリー・サロン・ド・テをオープンしました。
ボルドーはMme Satomiが過ごした福岡のように、大都市の刺激と自然の優しさが人間らしさを持つこの街に、自分達の感性と経験を注ぎ込もうと決意したそうです。お二人とも忙しい中でも、とても素敵な笑顔で快く対応していただきました。
店内は白を基調とし、入った瞬間色鮮やかなショーケースのお菓子に目を引き付けられました。
イートインスペースがあり、ケーキはもちろんブランチやランチもいただけます。
店員さんにおすすめを聞き、こちらのケーキを選択しました。
『Tamago』 たまご
Pâques(パック)限定のケーキです。口溶けのいいチョコレートのスポンジ生地、なめらかなチョコレートのガナッシュ、ナッツの香りと食感が楽しいフイヤンティーヌ(クレープ生地を薄くパリパリに焼いて砕いたもの)のプラリネ、ジャンドゥージャの濃厚なクリーム、ジャンドゥージャの生クリーム、中には酸味の効いたパッションのソースが入っています。
重くなりがちなチョコレートのケーキですが、濃厚なチョコレートやジャンドゥージャを効かせながら、爽やかなソースが入っていることでぺろりと食べることが出来ます。
ちなみにPâquesとはイースター(復活祭)の事で、イエス・キリストが十字架にかけられて亡くなった3日後に復活した事を祝うキリスト教の大切な祝日です。イースターのシンボルとして挙げられるのは卵や鶏・ひよこ・ウサギです。卵は「新しい命」の象徴であり、中から命が生まれる為キリストの復活と重ねられています。鶏やひよこは卵とセットで登場し、「春=生命の始まり」を表します。うさぎはたくさん子供を産むことから「繁栄」「命の象徴」とされています。パティスリーではイースターに合わせてこれらの形をしたチョコレートを販売することが多いです。先ほどのケーキも卵の形をしていますね!だから「Tamago」なのかな?
そしてチョコレートももちろん購入しました!
『Chou Sésame Praliné』 ゴマプラリネのシュークリーム
クッキー生地の乗ったシュー生地、濃厚なゴマのプラリネクリーム、生クリーム、仕上げにもゴマが使われています。
食べた瞬間ゴマの香りが口いっぱいに広がります。生クリームが2段も絞ってあって驚くかもしれませんが、甘みが抑えられていて、濃厚なゴマクリームと混ざるためベストな量です!プチプチとした食感も楽しいです。
パンも色々な種類売っています。
『Kare pan / Melon Pain』 カレーパン/メロンパン
なんとカレーパンとメロンパンが売られており思わず購入。フランスではどちらも中々お目にかからず、もしあったとしても日本のものとは味や食感が違うことが多いです。
カレーパンの中には日本風で少しスパイシーなカレーが入っており、大きめな衣と相まって食べ応え抜群!メロンパンの表面はしっとりしたクッキー生地に、ふわふわのパンが口溶けよくたまりません。フランスではメロンを使っていないのになぜメロンパンというのかと物議を醸しているとか・・・?
『Madeleine au Yuzu』 ゆずのマドレーヌ
ゆずが優しく香る、しっとりした生地のマドレーヌ。表面の糖衣掛けがとても薄く繊細にかかっており、シャリっとした食感と優しい酸味を出しながらも、マドレーヌ生地の香りが活きる量になっている。
この盛り上がっている部分は、マドレーヌのへそと言われる部分です。生地の作り方、温度管理、焼き方など色んな良い条件が重なると、きれいなおへそを作ることが出来ます。これがマドレーヌの理想的な特徴とされ、フランスでは「おへそがある」=「ちゃんと焼けている証拠」と言われることもあります。それぐらい重要なおへそがこんなにも綺麗に出ているなんで、見た目だけでもわかる美味しさですね!
『Sablé à la vanille』 バニラ味のサブレクッキー
しっとりしていながらも少し脆く優しい甘さのクッキーです。
コーヒーや紅茶などと一緒に食べるとより素材の味が引き立ちます。
お店の奥にあるオープンキッチンを見せていただきました。
とてもきれいに整頓されており、お菓子がすべて綺麗なのも納得がいきます。普段はアポランティー(見習いや研修中)やバイトの人、シェフお二人を合わせて最低5名で作業されているそうです。その人数であれほどのクオリティ・種類のケーキやパンを提供しているのにも驚きですね!
最後にいくつか質問をさせていただき、まずお菓子を作る際に大事にしていることを伺いました。
「砂糖やバターの量、食感や見た目などを含めた全体のバランスを大事にしています。複雑になりすぎると本来の美味しさから遠ざかってしまうと感じるので、出来るだけシンプルに、でも基礎が美味しい。それを大事な基礎だと思って作っています。「美味しい」の更に上をいく、「もう一度食べたい」と思ってもらえる美味しさを目指して作っています。」と、教えていただきました。私はまさにこの言葉が体現されたお菓子を食べることが出来たなと、強く実感しました。
次に現パティシエ、未来のパティシエに向けて一言いただきました。
「体力的にも精神的にも、簡単な仕事ではないとは思うのですが、夢のある職業であることを忘れず、お菓子を作る事、キッチンで働くことを楽しんでいく、パッションを忘れない、それが一番大切なことだと思います。美味しいスイーツは人を幸せにします。とても素敵なことです^_^」
世界各地で活躍し、いろんな経験を積まれたシェフお二人だからこそ、この素敵な考えとそれを表現し作り込んだ美味しいお菓子が生まれているのですね!
Bordeauxを訪れた際はお菓子を頂くことはもちろん、素敵なシェフお二人とまたお話をしに行きたくなると感じる出会いに感謝です!
皆様も是非訪ねてみて下さい!!
『Pâtisserie S BORDEAUX』
住所: 8 Cours Alsace Lorraine , 33000 BORDEAUX , France
HP : Patisserie S. Bordeaux|Pâtisserie S. | France
電話番号 : 05 56 06 94 54
メール : satomiandstanley@gmail.com
Instagram:Pâtisserie S.(@patisserie.s.bordeaux)
営業日時 : / 月・木 ~ 土曜日 : 10h - 19h
日曜日 : 10h - 13h
火~水曜日: 定休日