OSAKA

辻調理師専門学校 (調理)

ブログ

ブームが続いているウイスキーの話

調理技術マネジメント学科
高度調理技術マネジメント学科

2021.07.07

こんにちは。
西洋料理のコマンダトーレです。
昨年までエコール 辻 大阪のカフェクラスのブログを担当していました。
今年は辻調理師専門学校のブログを担当します。

辻調の調理技術マネジメント学科(2年制)、高度調理技術マネジメント学科(3年制)は専門コースになり、サービスの授業があります。
学生なので試飲はできませんが、お酒に関する授業も行っています。
なんといっても、ワインや日本酒などお酒は料理に欠かせないパートナーですから!

今回はソムリエとバリスタの資格を持ち、お酒が大好きでカクテルも作れる私が
ウイスキーの分類を紹介したいと思います。

では、ウイスキーの分類に関して国別に紹介していきます。
以下の5つがウイスキーの有名な産出国です。

①スコッチ・ウイスキー  
イギリスは「イングランド」「ウェールズ」「スコットランド」「北アイルランド」からなる連合王国ですが、
一番大きなグレートブリテン島北部にあるスコットランドで造られるのがスコッチ・ウイスキーです。
スコッチ・ウイスキーは
「モルト・ウイスキー」「グレーン・ウイスキー」「ブレンデッド・スコッチ・ウイスキー」の3つに分けられます。

●「モルト・ウイスキー※①」...大麦麦芽が原料で単式蒸留(ポットスティル※②)を2回行います。
力強いモルト・ウイスキーだけで造った商品もあり、複雑でヘビーな感じを持ち、
個性的なものが多くあります。
なかでも「ハイランド」「ローランド」「キャンベルタウン」「アイラ島」などの産地が有名です。

●「グレーン・ウイスキー」...大麦以外にもトウモロコシや小麦なども原料にして
連続式蒸留(パテントスティル※③)を行います。
比較的柔らかいグレーン・ウイスキーはブレンド用とされており、
グレーン・ウイスキーだけの商品はほとんど売られていません。

●「ブレンデッド・スコッチ・ウイスキー」...上記の2つをブレンドしたもので最も多く出回っています。
よく、力強く男性的な「モルト・ウイスキー」と優しく、柔らかくて女性的な「グレーン・ウイスキー」を
ブレンドすることを結婚させるなどと言います。

写真は左がモルト・ウイスキー、右がブレンデッド・スコッチ・ウイスキーです。

※スコッチウイスキーは密造酒
18世紀ごろ、スコットランドはイングランドと合併しグレートブリテン王国が誕生しました。
スコッチ・ウイスキーは初め無色透明で、農民たちが農閑期に造って売り、副収入としているものでした。
これに目を付けた政府が課税を強化したため(※④)、
課税を逃れたい農民たちが隠れて密造酒を造るようになりました(※⑤)。

しかし、蒸留するには燃料の木が必要になります。たくさん伐採をしていると疑われるために
代わりにピート(※⑥)を燃やすようになりました。また、一度に売っても見つかるため、
シェリーの古樽に入れて洞穴に隠し、少しずつ売るようにしました。
これにより、スモーキーなピートの香りが付くようになり、樽の中でゆっくり熟成して琥珀色で
まろやかになったスコッチ・ウイスキーが誕生したといわれています。

②アイリッシュ・ウイスキー
イギリスのとなり、アイルランドで造られるものです。スコッチによく似ていますが、
ややシンプルな感じを受けます。
●「ピュアポットスティル・ウイスキー」...大麦麦芽や未発酵の大麦などが原料で単式蒸留を3回行います。
●「モルト・ウイスキー」...スコッチ・ウイスキーと同様ですが3回蒸留も認められています。
●「グレーン・ウイスキー」...スコッチ・ウイスキーと同様です。
●「ブレンデッド・ウイスキー」...上記のものをブレンドしたものです。

③カナディアン・ウイスキー 
主にライ麦、トウモロコシ、大麦で造られます。ややライトで飲みやすいものが多いと思います。
●「ライ・ウイスキー」...ライ麦を51%以上使用したものです。

④アメリカン・ウイスキー
バーボン・ウイスキーが有名ですが、アメリカ産がすべてバーボンというわけではありません。
比較的シンプルですが、荒々しく、パンチのあるヘビーな風味なものが多いと思います。
●「バーボン・ウイスキー」
 ...トウモロコシを51%以上原料にしてケンタッキー州のバーボン群で造られたものです。
●「ライ・ウイスキー」...ライ麦が51%以上ならライ・ウイスキーになります。
●「コーン・ウイスキー」...トウモロコシが80%以上ならばコーン・ウイスキーになります。

⑤ジャパニーズ・ウイスキー 
スコッチ・ウイスキーと同様で「モルト・ウイスキー」「ブレンデット・ウイスキー」があります。
味わいはスコッチと同様に複雑ですが、比較的ピートの香りがひかえめでバランスの取れたものが多いと思います。

☆ウイスキーのカクテル
ウイスキーのカクテルは「ハイボール」や「水割り」が定番ですが、
ちょっと気取ったカクテルを紹介しましょう。
私の大好きなカクテル、「ウイスキー・フロート」です。
アルコール度が40度もあるウイスキーは水より軽く、上手に注げば水の上に浮かべることができます。
氷を入れたり、冷たい水を使うレシピもありますが、私は水もウイスキーも常温で作るのが好みです。
今回は浮かべやすいようにアルコール度が50.5度の「WILD TURKEY 8年」を使用します。

水を入れたグラスの水面にバースプーンを置いて静かに注いでいきます。

仰向けにしたバースプーンにウイスキーを注ぐため、液体は底に行かずに左右に広がります。
このように氷を使わないほうが作るのは難しいんですよ。

きれいに浮かびました。静かに注ぐことでアルコールと水の境界もしっかりしています。

失敗ではありませんが、少しでも次ぎ方が雑だと中間層ができてしまいます。

飲むときは初めに濃いウイスキーが口に入るのでストレートに近くなります。

飲んでいくうちに水が加わるので水割りになっていきます。
氷を入れるスタイルならオン・ザ・ロックから水割りになっていく感じですね。

今ではいろいろな蒸留所を見学することが可能です。
私も山崎にあるディステラリー(蒸留所)を何度も見学しましたし、御殿場にも行ったことがあります。
特に御殿場は少しでも樽からの蒸発を防ぐためでしょうか、湿度が高かったことを覚えています。
山崎ではマザーウォーター(仕込み水)の泉を見てみたり、数種のポットスティルの形の違いを確認したり、
製造工程を一通り見ることができました。特に貯蔵庫で樽の並ぶさまは圧巻でしたね。

ウイスキーと一口に言っても国によってさまざま、蒸留所によっても個性があります。
複雑な風味を持つもの、ライトでバランスの取れたもの、アルコール度が高くてヘビーな味わいのもの、
スモーキーな香りが強いもの、海の香りがするものもありますので
自分好みのウイスキーを探してみるのも楽しいかもしれませんね。

※①モルト・ウイスキーの種類
モルト・ウイスキーもいくつかに分類されています。
●「シングル・モルト」1つの蒸留所内で造られたモルト・ウイスキーです。
ポットスティルの違いや樽の違いによって個性が異なるモルトをブレンドしています。
●「ヴァッテッド・モルト」他の蒸留所のモルト・ウイスキーをブレンドしたものです。
「ブレンデッド・モルト・ウイスキー」とも呼ばれます。
●「シングル・バレル」1つの樽(バレル)のもので、ほかの樽のものを混ぜずにボトリングしたものです。

※②ポットスティル 
蒸留が終われば中に残る水を捨てるために1回ずつ入れ替えが必要です。手間がかかりますが、
出来上がるウイスキーは個性的になります。
非常に繊細で何かをぶつけて形が変わっても味が変わってしまうそうです。

また、形によって味や香りが大きく変化するため、1つの蒸留所でもたくさんの種類の蒸留器があります。
例えば下記①のような背の低いものは重い香りが強くなり、
②のように背が高ければ華やかな香りが強くなります。
ほかにも③や④のようなユニークな形もあり、蒸気の上がり方が変化することによって味わいも変わり、
直火や蒸気など熱源によっても味が変わるようです。

※③パテントスティル 
連続式の蒸留器で原料が同じであればどこで造ってもあまり違いがないといわれています。
※④一説にはイングランドが戦争のための資金捻出に増税したといわれています
※⑤密造酒なのでマウンテン・デュー(山のしずく)やムーンシャイン(月の光)など
といった隠語で呼ばれていました。

※⑥ピート
泥炭と呼ばれ、スコットランドでは平原の下にあり、スコップで掘り出せます。
もとは主にヒースという名前のピンクの小さな花をたくさんつける植物が積もり積もって炭化したものです。
乾燥させて燃料に使用します。

~プロフィール~
・中谷聡博(ナカタニトシヒロ)
ソムリエとバリスタの資格を持ち、サービスの授業を担当しています。
お酒全般が好きですが、特に日本酒とウイスキーが好きです。
ニックネームの「コマンダトーレ」はイタリア語で「司令塔」の意味ですが、一般的ではないそうです。。。